2020 Fiscal Year Research-status Report
微弱通電により歯科補綴物を除去可能なスマートセメントの創製
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19K19114
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
梶本 昇 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (30824213)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イオン液体 / セメント / 接着 / 脱着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,イオン液体をグラスアイオノマーセメントに添加した試作セメントの通電による脱着機構の検討を行った。 基礎的な検討として,イオン液体TH(アンモニウム系のイオン液体:tris (2-hydroxyethyl) methylammonium methylsulfate)のTiに対する電極反応を電位走査法にて調査した。2V(vs. Pt)までの走査では,アノード側の電極反応では気泡の発生が認められなかったが,カソード側では,1.5V(vs. Pt)付近から気泡の発生が認められた。上記結果を踏まえ,THを10%添加したセメント硬化体で更なる検討を行った。電気伝導性をほとんど示さない95%エタノール溶液中で,セメント硬化体にTi製の電極を2か所接触させた状態で直流電源を用いて通電を行った。2つの電極間の電位差が約5Vで,カソード側で気泡の発生が認められ,電位差の上昇に伴って気泡の発生量が増加した。一方,アノード側では,電極の変色が認められた。同様の実験をイオン液体非添加のグラスアイオノマーセメント硬化体で行ったところ,カソード,アノード共に気泡の発生は認められなかった。得られた結果から,通電時の気泡発生はイオン液体の添加に起因し,カソード側で発生すること,電極間電位が5Vのとき,カソード側に1.5V(vs.Pt)に相当する電位が印加されることが示唆された。 本セメントに通電による接着界面の剥離は,アノード側,カソード側どちらでも観察された。カソード側で剥離が起こる場合は,気泡発生が接着界面の破壊に関与していると考えられる。一方,アノード側で剥離が起こる場合は,金属被着体のアノード酸化が関与していると考えられる。 脱着メカニズムとして電極反応を挙げたが,直接的な機構は未解明であり現在も調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電気化学的な分析を外部施設で行う予定であったが,外部施設への出張が困難となったことにより,装置を購入して自らの研究室で分析を行うこととなった。分析装置の購入や原理・方法を習得するまでに時間を要した結果,実験が遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に実施した研究結果に基づいて,脱着メカニズムの検討を気泡の発生の観点から検討を行う。すなわち,通電による気泡発生が接着強さに与える影響を調査する。また,2019年度に実施した細胞毒性試験の結果の考察や基礎物性調査のため,セメントの溶解性,溶解成分の分析を行う。これらの結果を元に,適応可能な条件や適切な通電条件を明らかにすることで,補綴物の除去への有効性を検討していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い,外部施設への出張が困難となり実験が遅延している。それに伴い,補助事業期間の延長をしたために次年度使用額が生じた。
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