2019 Fiscal Year Research-status Report
Organ-on-a-Chip技術を応用した新規歯胚分化誘導法の開発
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19K19116
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀江 尚弘 東北大学, 大学病院, 医員 (30802318)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 再生歯胚 / 分化誘導 / iPS細胞 / Organ-on-a-Chip / FGFR3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,歯の発生機構において重要な要素である上皮-間葉相互作用に着目し,ヒトiPS細胞(hiPS細胞)の分化誘導実験において,細胞間相互作用の再現に適した培養方法を探索して,歯胚細胞の上皮-間葉相互作用を模倣可能な,歯胚への安定した分化誘導の実現を図る。同目的を達成するため,本研究ではhiPS細胞由来の歯胚上皮・間葉系細胞を密な環境下で共培養し,歯胚形成と関連があるFGF3,FGF4,FGF10やBMP4を培地中に添加して分化誘導を促進させる。更に,申請者らが過去に樹立した,各種FGFをリガンドとするFGFR3のゲノム編集hiPS細胞を,歯胚細胞へと分化させて同様に培養し,安定した分化誘導能を備えた歯の発生モデルの確立を試みる。 平成31年・令和元年度の研究計画として以下の項目を設定した。まず,hiPS細胞を歯胚上皮・間葉系細胞へと分化誘導し,それぞれの細胞をOrgan-on-a-Chip上で共培養して,歯胚への分化誘導に最適な播種細胞数・培地灌流速度を決定する。次に,Chipに灌流する培地中に歯胚発生への関与が報告されている種々のタンパク質を添加し,最も歯胚形成を促進させるタンパク質を導き出す。 本年度に実際に進捗できた事項としては,Organ-on-a-Chipとは他に,細胞間相互作用を模倣するツールとして,マルチウェルプレート上の透過性コラーゲン膜を用いた歯胚上皮細胞・間葉細胞の共培養系のコンセプトを確立した点がある。 今後の研究の推進方策として,まずは株化細胞による共培養系を用いた解析を進める予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の進捗として.まず歯の発生モデルを確立するにあたり,Organ-on-a-Chip器材を用いて微小空間での灌流培養方法の確立を試みた。SNL細胞およびhiPS細胞をChip上に定着させることには成功したが,灌流培養を試行した際,均一な灌流速度にて培養を維持する事が困難であったため,別の手法を応用する方針とした。 新しい方策として,マルチウェルプレート上の透過性コラーゲン膜を用いた共培養系を応用することとした。同培養系は先行研究(Arinawatiら,J Biosci Bioeng. 2018.)にあるように,歯胚細胞の共培養系として応用可能である事が報告されており,本研究では細胞間相互作用を再現するため,幹細胞を応用して歯の発生モデルの確立を試みている。これまでヒト由来のMSCを同コラーゲン膜上で培養することに成功し,現在,別の細胞についても共培養系への応用の可能性を検討している。 候補となる細胞の内,代表研究者らが過去に樹立した,歯胚への分化誘導促進が期待される変異が導入された“FGFR3ゲノム編集hiPS細胞”;hiPS細胞にCRISPR/Casシステムによるゲノム編集を施し,FGFR3の機能亢進症である軟骨無形成症の原因遺伝子変異をhiPS細胞に導入して,FGFR3タンパク質の発現を増加させた病態モデルiPS 細胞(Horie N ら,Regen Ther. 2017.)を本培養系へ用いる準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として,まず歯胚上皮・間葉系細胞を透過性コラーゲン膜上で共培養する事が第一優先事項であるため,まずは株化された歯胚上皮細胞,間葉系細胞を用いた初期検討を行った後,当初の計画に沿ってhiPS細胞に歯胚上皮細胞(エナメル芽細胞:Arakakiら,J Biol Chem. 2012.)/歯胚間葉細胞(象牙芽細胞:Otsuら,Stem Cells Dev. 2012)への分化誘導を施し,歯胚上皮マーカーのAmelogenin,Ameloblastin,Epiprofin遺伝子,間葉のマーカーはMsx-1,Msx-2,Pax9,Lhx6遺伝子の発現をリアルタイムPCRにて解析し,分化度合いを確認する予定としている。 更に,本共培養系に灌流装置を組み込み,複数の条件で播種細胞数・培地灌流速度を設定し,その中で上皮-間葉相互作用が働き,マーカー遺伝子の発現が最も上昇する培養条件を選定する。その後,歯胚発生への関与が報告されている,FGF3,FGF4,FGF10(Kettunenら,Dev Dyn. 2000,Vaahtokariら,Development. 1996.)や,BMP4(Tummersら,J Exp Zool B Mol Dev Evol. 2009.)を培地に添加し,各マーカー遺伝子の発現を最も上昇させる添加因子を選出する。以上の検討結果から導き出された最適条件にて,歯胚上皮・間葉細胞を共培養し,安定した分化誘導能を備えた歯の発生モデルの確立を試みる。
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Causes of Carryover |
当初計画していたOrgan-on-a-Chip関連物品(Chip構成パーツ,チューブ等)の購入を延期したため,次年度使用額が生じた。使用計画としては,次年度に同製品または別の培養機器を購入する見込みである。
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