2020 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼筋由来マイオカインの概念確立 ―次世代シーケンシングによる生体内網羅的解析―
Project/Area Number |
19K19126
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
沼本 賢 岡山大学, 大学病院, 医員 (70837111)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 咀嚼筋 / マイオカイン / 筋活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,咀嚼の能動器官である咀嚼筋において,咀嚼運動時に産生されるマイオカインを網羅的に探索し,「口から食事をとることが全身健康に与える影響」を科学的に証明する糸口とする。具体的には,①咀嚼時に咀嚼筋の筋細胞内で産生されるマイオカインは,四肢の筋由来のものとは異なるか,②それらの体内循環動態と経時的挙動に着目し,健全な口腔機能が全身健康に与える影響を,咀嚼筋のバイオロジーから紐解く基盤を形成する。そこで,咀嚼筋と四肢の筋で産生される物質を比較するにあたっては,まず,腱,血管,結合組織などを含まずに筋細胞のみから遺伝子を抽出する必要がある。本研究は,マイクロダイセクション法で特異的に筋細胞を回収し,その細胞から得た少量のmRNAで解析が可能となるように次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析の実施を計画した。前年度に確立したマイクロダイセクション法による細胞の回収方法ならびに少量のmRNAから増幅ステップなしで網羅的定量比較解析する手法を咬筋に応用することを試みたが,mRNAのクオリティーの確保が困難であったため,今年度は筋組織自体を回収し,代表的な咀嚼筋である咬筋と複数の四肢筋組織内において,安静状態で発現する遺伝子群の差異を検討した。その結果,マウス咬筋組織内ではWhey acidic protein (WAP) メンバーに属するWAP four-disulfide core domain 12 (Wfdc12)遺伝子が特異的に発現することを明らかにした。Wfdc12は,抗菌作用,抗炎症作用を有するタンパクであり,対照として設定した他の骨格筋(上腕三頭筋,腓腹筋,大腿四頭筋)組織内には発現を認めなかった。
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