2019 Fiscal Year Research-status Report
骨形成能を持つ新規BP製剤の局所投与による新しいインプラント治療法の確立
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19K19151
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 悠 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00824450)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | MPMBP / 骨形成 / 骨吸収 / オッセオインテグレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
イソフルランの吸入麻酔によってWister ratに全身麻酔を施し、大腿骨に特注のチタンインプラントを埋入した(ラット大腿骨チタンインプラント埋入モデル)。埋入インプラント周囲にMPMBPを投与した群を実験群、埋入インプラント周囲に生理食塩水を投与した群を対照群とした。薬剤および生理食塩水は3日に1度投与し、インプラント埋入手術から1、2、3、4週で屠殺し、大腿骨を採取した。PFAで還流固定および浸漬固定を一晩行い、マイクロX線CTを撮影した。形態的には、実験群では骨内のインプラント周囲および骨外のインプラント周囲に骨形成がみられ、それが維持される傾向があった。対照群では骨外のインプラント周囲に形成された骨は2週をピークに減少に転じる傾向があった。しかし、チタンインプラントによるアーチファクトの影響で、インプラントに最も近い新生骨の色調、形態の評価が困難であった。CT撮影後は10%EDTA溶液で脱灰し、パラフィン包埋して組織標本を作製した。実験群では、骨内の埋入インプラント周囲とともに、骨外にも新生骨が形成される。新生骨量は2週をピークに急激に増加した後、減少に転じる。対照群では、同じく2週をピークに新生骨量が急激に増加し、その後の減少に転じる。しかし、対照群では骨外の新生骨量が少ない傾向があり、また、新生骨の減少速度は速かった。骨外の新生骨は、実験群、対照群のいずれにおいても3週までに既存骨と同じ高さにまで吸収される。インプラントに接する骨表面には一層の線維組織が介在し、それは、実験群も対照群も変わらず4週まで残存していた。しかし、今回作成した脱灰組織標本ではチタンインプラント体を除去しており、インプラント-骨界面の評価は不十分であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
可能であれば動物実験は長期間の経過観察も含めすべて終了させたかったが、短期の経過観察で追加の検討が必要となり、実験の進行が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
撮影したマイクロX線CT画像について、予想よりもアーチファクトの影響が強く、視覚的な観察ではわかりづらい部分もあったため、アーチファクトの影響を極力除外した検討方法について、画像調整ソフトなどを利用し模索することが必要である。定量的な分析で骨量を評価することを目標としている。 組織所見について、本年度は視覚的な分析にとどまったため、定量的な骨量の分析が必要である。ヘマトキシリン=エオジン染色(HE染色)の組織写真を用いた定量的な骨量の分析については、確立された手法があるため、今後定量的な分析を行う。染色方法について、本年度はHE染色のみ行ったが、エラスティカ=マッソン染色を用いた線維組織の明瞭な描出による評価や、ALP染色やTRAP染色を用いた骨芽細胞、破骨細胞の同定により、骨形成、骨吸収の局在や、時期について評価・検討する。 また、オッセオインテグレーションの評価のため、インプラント-骨界面の組織所見についても検討を要するが、今回の脱灰標本では埋入したチタンインプラントを除去しており、界面の観察は困難である。MMA樹脂包埋による非脱灰標本を用いた組織観察が今後必要になる。また、非脱灰標本を用いては、骨質についてのEDXによる成分分析を想定しており、今後進めていく予定である。 さらには、長期間の経過観察(8週、12週を想定)でどのような骨形成、骨吸収の経過をたどるのか評価するため、さらに動物実験を追加する予定である。
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Causes of Carryover |
動物実験が計画よりも進まなかったため、飼育費などとして計上していた分の費用が残っていた。来年度に繰り越しとする。
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