2020 Fiscal Year Research-status Report
創傷治癒能力とミトコンドリア機能に着目した新規創傷治療法の開発
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19K19156
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
齊藤 泉 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (10836456)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 炭酸ガス / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、異なった細胞間の治癒能力の違いとミトコンドリア機能との関連性を調査し、局所的炭酸ガス投与によって、ミトコンドリアをターゲットとし、創傷治癒を促進する新しい治療法の開発を目指すことである。ヒト口腔粘膜由来細胞(線維芽細胞)、ヒト皮膚由来細胞(線維芽細胞)をそれぞれ培養し、RNAを回収し、各細胞の通常培養状態でのミトコンドリア量(mtDNA/nDNA)、ミトコンドリア機能制御に関わる因子(PGC-1α, TFAM, NRF-1/2)を検討中である。 ラットの背筋にデルマパンチ(直径6.2mm)を用いて背部皮膚を除去し皮膚欠損モデルを作成した。翌日より炭酸ガス吸収ペーストを創部へ連日塗布し、3・7・14・21日後に組織を採取して創傷治癒に関わる因子の発現を比較、検討した。コントロール群、炭酸ペースト群において、7, 14, 21日目の創部の写真撮影を行い、創傷治癒の観察およびImage Jを用いた面積の測定を行った。RNAを回収し、Real-time PCR法で計測した。炭酸ペースト群において、創傷治癒が促進された。IL-1β, IL-6等の炎症性マーカーは炭酸ペースト群で減少した。また炭酸ペースト群において、HIF-1αの減少を認め、低酸素環境が改善されていることが示唆された。VEGF, TGF-β等の創傷治癒マーカーは炭酸ペースト群で増加した。これら創傷治癒マーカーは、免疫染色においても同様の結果を得た。またHE染色において、瘢痕形成抑制や炎症性細胞浸潤の減少を認めた。これらのことから、炭酸ペーストは創傷部の低酸素環境を改善し、創傷治癒を促進する可能性が示唆された。また背筋にマーカインを注入した瘢痕モデルを作成し、同ペーストの効果を確認したところ、炭酸ペースト群において、炎症マーカーの減弱、筋再生マーカーの増加を認めた。また病理学的に瘢痕形成が抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該計画に従い、順調に研究が遂行されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在検討中の、vitroの研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究はおおむね順調に進んでおり、年度末に本研究計画に使用する物品の購入を検討したが、物流、納期の関係で、購入が不可能であった。次年度使用額に加えて、本研究に必要な物品を購入予定である。
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