2019 Fiscal Year Research-status Report
メタゲノム・メタ16S解析を用いた口腔癌患者の腸内並びに口腔内細菌叢の多様性解析
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19K19162
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松井 健作 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (60826874)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 腸内細菌叢 / 口腔内細菌叢 / メタゲノム解析 / メタ16S解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに、健常人と口腔癌患者において、採便キットを用いた糞便採取および滅菌綿棒を用いた口腔内プラーク採取により、腸内細菌叢および口腔内細菌叢をT-RFLP法により解析を遂行し、多変量解析の一つである判別分析法により健常人と口腔癌患者間での異なるクラスター(dysbiosis)を形成していることを明らかにした。また、治療開始後から経時的に採便と口腔内プラーク採取を行い、経時的な細菌叢の変遷を解析した。口腔癌患者群の治療前の腸内細菌叢は、健常コントロール群と比較してClostridium属の占有率が有意に低いことが明らかとなった。多変量解析である判別分析により、口腔癌患者の治療前の腸内細菌叢は、健常人コントロール群の腸内細菌叢の構成が異なり、dysbiosisの状態であった。 口腔内細菌叢については、T-RFLP法に加え、種レベルにおける口腔内菌叢の菌叢構造の差異を見出すことを目的とし、イルミナ社の次世代シーケンサーmiseqを用いたメタ16s解析を実施している。現在までの解析の結果、健常人と口腔癌患者間で異なる菌種が存在し、種レベルにおいては、口腔癌患者群と健常人群とではp値0.01以下であり、菌叢構造に有意な差があることが明らかとなった。 メタ16S解析ではANCOM解析を実行し、検出可能な全細菌種のうち、それぞれ全ての細菌種の存在比について、各群別の平均値に有意な差があるか検定した。その結果、口腔癌患者群においてグラム陽性嫌気性球菌群の1種が有意に多いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔癌初診患者45名と健常人7名の解析対象に対し、本人同意のもと腸内細菌叢および口腔内細菌叢をT-RFLP法により解析した。口腔癌患者においては、治療開始1週間後、4週間後、12週間後、退院後6ヶ月、退院後1年まで経時的に解析を行い、治療前後での細菌叢の変化を解析した。T-RFLP解析の菌叢解析の統計処理にはJMPver15を用いた。 次世代シーケンサーを用いた解析では口腔癌患者群21名を行った。一方、対照として健常人群13名で経時的な解析を行った。口腔癌患者の治療前プラーク21検体と健常人のプラーク13検体(計34検体)に対し、メタ16S菌叢解析を行い、リード数、クオリティーチェックを行った結果、健常人1検体、口腔癌患者1検体が不適のため除外されたため、32 検体を用いて統合配列解析を行った。 健常人群と口腔癌患者群の2群間で、占有率に有意差を認める菌種を検討するために、検出されたすべての菌種に対して細菌占有率の比較を行った。メタ16S解析ではANCOMを実行し、全細菌種のうち、それぞれ全ての細菌種の量について、各群別の平均値に有意な差があるか検定した。その結果、口腔癌患者群においてグラム陽性嫌気性球菌群が有意に多いことが明らかとなった。T-RFLP解析の結果も、メタ16S解析結果と同様に口腔癌患者群で増加しており、両解析とも同様の傾向を示した。 以上のように、研究目的を完遂すべく、当初の研究実施計画に準じた研究を遂行できているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔癌患者のdysbiosisを確立していくため、健常人コントロール群を目標数の15名まで登録を増やし、口腔癌患者と健常人群の細菌叢の比較検討を行う。 これまでの研究方法により明らかとされた、口腔癌患者の有する特定の細菌叢と、病態への影響メカニズムを詳細に検討するために、免疫チェックポイント機構を中心として検討する。その方法として、登録した口腔癌患者の生検時組織を使用し、口腔扁平上皮癌組織におけるPD-L1ならびにPD-1の発現を免疫組織化学的に検討し、細菌叢と免疫応答に対する関連について検討する。さらに、臨床病態や生存率との相関について検討する。さらに細菌由来の短鎖脂肪酸が扁平上皮癌細胞におけるPD-L1遺伝子ならびに蛋白発現に与える影響を定量PCR法、WesternBlotting法で解析する。 特定の細菌叢と生体との相互作用および病態への関与を検証し、特定の菌叢から予後を予測し、治療効果判定や選択等に応用できる新規診断方法の開発の一助となることを目的として、研究を推進する。
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Research Products
(1 results)