2019 Fiscal Year Research-status Report
カテプシンKに注目した口腔扁平苔癬の上皮-樹状細胞ネットワーク機構の解明
Project/Area Number |
19K19165
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 昌樹 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (60805282)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 口腔扁平苔癬 / カテプシンK / 樹状細胞 / Th17 / TLR9 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、OLP の病態形成に関わる疾患関連分子を同定することを目的とした。 OLP患者の頬粘膜の病変組織をLaser microdissection(LMD)にて病変部と健常部を分離採取し、DNAマイクロアレイを行った結果、個人差はあるものの明らかに発現の異なる遺伝子が多数存在し、3検体で共通して発現増加した遺伝子は76個、減少した遺伝子は9個であった。発現増加した遺伝子のうち、Th細胞活性化に関与する液性因子としてカテプシンK(CTSK)が抽出された。通常CTSKは破骨細胞より発現し、骨破壊に関与していることが知られている。最近の研究では、CTSKはDCのTLR9に作用しIL-6やIL-23などの炎症性サイトカイン産生を制御することで、Th17細胞分化を誘導し自己免疫性炎症を引き起こすことが報告されている。そこで、免疫組織化学染色およびreal-time PCRでバリデーションを行い、OLP、過角化症、上皮性異形で関連分子の発現について分析した。その結果、CTSK、IL-6、TGF-β1、IL-23はOLPの組織で特に強く発現していた。二重免疫蛍光染色により、CTSKの発現は主にCD11cおよびTLR9と共局在することが示された。また、ヒトにおいてTLR9はpDCとB細胞にのみ発現していることが知られているが、OLP病変局所のTLR発現細胞はpDCであることが示された。 また、CTSKがヒトpDCのTLR9に作用することにより IL-6、TGF-β1、IL-23の発現を増加させるか確認するために ①pDC、②pDC+cpgDNA(TLR9agonists)、③pDC+cpgDNA+CTSK、④pDC+CTSK+LR9 のantagonists 計4つの条件で細胞培養を行いELISA法にて分析を行った。その結果、 上記サイトカインは上記③の場合において明らかな増加を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
おおむね当初の予定通りに進捗しているが、研究のバリデーションや候補分子の発現や局在の定量化を行う上で多量のサンプルを必要とするため、サンプル採集に苦慮することがありやや遅延している。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)カテプシンK刺激によるpDCのTh細胞活性化因子産生能の解析 ヒトpDC株にカテプシンKで刺激し、その後培養上清を採取してサイトカインアッセイを行い、発現が亢進した可溶性分子を検索する(in vitro)。
(2)OLP モデルマウスの樹立に向けたカテプシンKトランスジェニック (Tg) マウスの作成 (real-time PCR法、免疫組織化学染色法、蛍光二重免疫染色、フローサイトメトリー) カテプシンK Tg マウスの口腔粘膜の採取し、発赤・びらん形成の有無や病理学的所見を確認する。カテプシンK Tgマウスの口腔粘膜にOLP様病変が認められれば、さらにカテプシンK阻害薬による口腔粘膜の消炎効果も検討する予定である。このTgマウスがOLPの病態を反映することができれば、現在難航しているOLPモデルマウスの確立にもつながり、現在第一選択薬であるステロイドに代わる新しい分子標的治療にも繋がることが多いに期待される。
|
Causes of Carryover |
現在は、本実験におけるバリデーションを行う上で十分な数の組織採集が済んでおらず、それに伴い使用額も一部未使用になっている。 次年度からはカテプシンKに注目して、症例数をさらに増やして、OLPの病変局所における発現と局在および臨床所見(悪性化の頻度や病型)との関連について最新の機器であるTissueFAXS(定量化)を用いて検討を行う予定である(validation)。また、ヒトpDC株にカテプシンK刺激し、培養上清を用いたサイトカインアッセイ、3.OLP モデルマウスの樹立に向けたカテプシンKトランスジェニック (Tg) マウスの作成を行う予定である。
|