2021 Fiscal Year Research-status Report
内臓脂肪型肥満発症経路が関与する抗癌剤耐性機構の解明
Project/Area Number |
19K19171
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
喜名 美香 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (80578914)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 内臓脂肪型肥満 / BMI / 抗がん剤感受性 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去に肥満や野菜摂取不足も癌の危険因子であることが報告され、肝臓癌や前立腺がんと肥満の関連が報告されている。しかし、肥満が癌患者の予後不良因子である理由についての科学的根拠はいまだ不明であり、口腔癌と肥満に関する報告は少ない。本研究では、まず、口腔腫瘍患者の初診時BMIとその他の臨床的因子(性別・年齢などのクリニカルキャラクター)との間で何らかの相関関係がないか検討した。その結果、抗がん剤感受性の指標となる、腫瘍の組織学的分化度(高・中・低)と男性患者のBMIとの相関関係を検討したところ、BMIが高値の男性口腔がん患者集団においては、腫瘍の組織学的分化度が低くなる傾向が観察されている。 肥満は脂肪組織に慢性炎症がおき、全身に悪影響を与えることが知られている。そこで、TCGA(The Cancer Genome Atlas)のデータを用いて、頭頸部扁平上皮癌患者の腫瘍周囲の微小環境、特に、炎症細胞や免疫細胞の浸潤に関して比較したところ、分化度が低いほど、TNF‐α(Tumour Necrosis Factor‐alpha)、単球、CD8陽性T細胞、および形質細胞様樹状細胞の浸潤が低中分化型腫瘍において強まっていることが観察された。 これらことは、男性患者のBMIと腫瘍の抗がん剤感受性を制御する腫瘍微小環境において何らかの相互作用が存在していることを示唆している。今後は、BMIと組織学的分化度の相関関係をさらに検討していくとともに、現在観察されているBMIと腫瘍微小環境との間の相互作用を媒介する因子の探索を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の移動に伴い、実験準備や研究データ解析に時間を要しており、当初の予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、TCGAのデータを用いた解析から、CD14陽性単球細胞、CD8陽性T細胞、CD123陽性形質細胞様樹状細胞などの炎症および免疫細胞の浸潤が低中分化型腫瘍において、高分化型腫瘍と比較して、より強く浸潤していることが観察されている。 今後は、現在候補として挙がっている媒介因子TNF-αなどと、各種の免疫細胞、BMI、腫瘍分化度との相関を免疫組織学的に検討する予定である。 具体的には、これらの浸潤の様子をヒト腫瘍組織に対する免疫組織学的染色を行うことで検討していく。さらに、初診時BMI高値と低値の患者を比較して、これらの細胞浸潤に相違が生じているかも併せて検討する。また、男性患者で優位に観察されている理由に関しても検討していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、実際のヒト腫瘍組織を用いた免疫組織学的染色およびデータ解析に時間を要し、実験に必要な機材および消耗品に充てるためである。 今後は、免疫組織染色から得られた実験結果と、BMI依存的に腫瘍細胞への炎症や免疫に関与する細胞浸潤がどう変化するか検討する予定である。
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