2019 Fiscal Year Research-status Report
メッケル軟骨におけるセプトクラストの役割と破軟骨細胞との役割分担機構の解明
Project/Area Number |
19K19174
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
坂下 英 明海大学, 歯学部, 助教 (20823181)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メッケル軟骨 / セプトクラスト / 破軟骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスメッケル軟骨の吸収面には、胎生16日齢(E16)から出生直前のE18にそれぞれE-FABP免疫陽性の領域が観察された。これらのE-FABP陽性細胞がセプトクラストかの確認のため、セプトクラストの既知のマーカーであるcathepsinB抗体,MMP-13抗体による免疫組織化学的検索。DBAレクチン染色による一致性を確認したところ、メッケル軟骨吸収面に存在するE-FABP陽性細胞の一部にcathepsinB抗体の共局在生が認められた。また吸収面に存在するセプトクラストの数・3次元的な形態を共焦点レーザー顕微鏡で解析したところ、軟骨吸収の最も活性の高いE16,17が最も多く、吸収後期のE18では少なくなっていた。3次元的形態ではE16,17では突起を有した紡錘形細胞であったが、E18では突起の数、細胞の形態がやや球形の細胞が観察された。このことよりメッケル軟骨吸収面に存在するセプトクラストはn-3系脂肪酸やレチノイン酸による代謝機構が存在することが強く示唆された。 また、セプトクラストの詳細な局在性、他の軟骨吸収面に存在する細胞との位置関係を精査したところ、セプトクラストはvon-kossa不染域である未石灰化軟骨気質にその突起を伸ばし、酒石酸抵抗性ホスファターゼ陽性の破軟骨細胞より、やや吸収前方部に存在していることが確認できた。さらにセプトクラストはperivascullar-cellとも呼ばれているため吸収面に存在する血管内皮細胞をendomucin抗体を用いて二重染色をしたところセプトクラストよりやや吸収前方部に局在していた。メッケル軟骨の吸収面に存在するセプトクラストは吸収前方部に毛細血管と隣接して存在し、未石灰化軟骨気質を吸収し、やや後方で石灰化軟骨気質を破軟骨細胞が吸収する役割分担を行なっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
既存のE15,16,17,18ddyマウス胎仔組織を用いたマウスメッケル軟骨の吸収面における免疫組織化学的解析は行っているものの主に以下の理由で遅延している。 1,凍結連続切片での薄切切片の作成が困難であったためE-FABP陽性セプトクラストと軟骨吸収面に存在する破軟骨細胞や血管内皮細胞との位置関係の解析が困難であった。特に石灰化軟骨器質と未石灰化軟骨気質の境界で組織の裂開が認められ、吸収面の解析で使用できる切片の作成に苦慮した。 2,吸収面における毛細血管の分布が少なく、血管内皮細胞の免疫組織化学的染色を行うことに苦慮した。 3,E-12マウス胎仔の第一鰓弓を用いたメッケル軟骨の器官培養は、上記組織切片の作成に時間を費やしおており未だ行えていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記遅延の理由を改善するために1,マウス胎児を摘出後の脱血方法、固定時間、方法を再検討し、軟骨吸収面での切片の裂開を防ぐ必要があると考えられる。さらに凍結切片では6μmでの切片作成が限界であり、今後パラフィン包埋を用いて4μm以下の薄切切片の作成を検討する必要があると考えられる。2,軟骨吸収面に存在するセプトクラストに特異的な遺伝子を、RT-PCR,in situ hybridization法を用いて解析し、LAMD法でタンパク量を解析する。3,器官培養ではE12マウス胎仔第一鰓弓を摘出し、計10日間培養を行う。培養後の組織を解析し、メッケル軟骨の吸収が開始しているか確認する。これら組織をコントロール群とし、n-3脂肪酸、レチノイン酸を用いた実験群と比較する。この際、投与するn-3系脂肪酸・レチノイン酸の濃度を解析し、n数を増やしていく予定。
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Causes of Carryover |
2019年は既存の組織を用い免疫組織化学的検索を行ってきたが予定より、実験が大幅に遅れていた。2019度末より新規の動物の購入、器官培養などの研究を検討していたが、COVID-19の影響で2020年より検討していた実験系一時中断し、さらに遅れが生じている。 今後、メッケル軟骨に存在するセプトクラストの数・形態的解析・免疫組織化学的解析を行う上で、新規購入動物による固定方法の再検討、パラフィン包埋による4μm以下の薄切連続切片の作成、薬剤の新規購入等は必要であると考えられる。器官培養を行う上でddYマウス胎仔(E12)の第一鰓弓を使用予定であるが、本研究で必要なメッケル軟骨の吸収開始を認める組織培養は培養時期・期間・使用薬剤の濃度の検討は必要と考えられ、2020年度早期での実験開始を予定している。上記実験系が順調に進行した場合、E15,16,17,18の胎児期メッケル軟骨における遺伝子発 現量をin situ hybridization法及びRT-PCR法により解析し、メッケル軟骨吸収面に存在するE-FABPのタンパク量をレーザーマイクロダイセクション(LMD)法にて解析する予定である。
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