2020 Fiscal Year Research-status Report
痛み受容体の遺伝子多型と癌性疼痛の性状の関連解析:診断・治療法の開発を目指して
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19K19218
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
吉住 潤子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (40596376)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TRPチャネル / 癌性疼痛 / SNP |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌患者の約70%は初発時、再発時の初期症状として痛みを訴え、治療前の自発痛と生命予後には正の相関があるとの報告がある。また、いわゆる前癌病変である白板症・紅板症では痛みがないと考えられてきたが、最近悪性転化により痛みを生じると報告され、がんと痛みの関連が示唆された。 また、口腔扁平上皮癌細胞から放出される成分が TRPV1、TRPA1を活性化し、痛みを引き起こすモデルが報告された。よって、がん細胞により形成される微細環境やがんの浸潤による炎症にたいしてもこれらTRPチャネルの抑制により痛みを制御できる可能性もある。患者により保有する遺伝子型の組み合わせは多様である事から、SNP の保有やそれらの組み合わせ頻度、感覚異常との関連を明らかにする事で、近年盛んに研究が進んでいるTRPチャネル群の作用薬・拮抗薬を効果的に選択できる可能性があり、より患者にあったテーラメード医療の実現へのみちを拓くことに繋がると考えられる。 本年は本学ヒトゲノム・遺伝子解析倫理審査専門委員会の承認を得て、臨床研究を開始した。同意の得られた患者群、対照群の患者を登録し、患者群、対照群の口腔がん組織または口腔粘膜病変から採取した生検または手術標本のうち、診断に影響を与えない余剰部分の病理組織標本の一部を使用する。また、同意の得られた患者群、対照群の患者を登録し、同意書取得時に採取用漏斗に吐き出して4ml程度の唾液を採取する。唾液DNA採取&保存デバイス(Oragene ・DISCOVER (DNA Genotek Inc, Canada))を用いて、DNAを抽出している。これらのサンプルよりこれまでに疼痛との関連が示唆されているSNPを調べることとした。 その他の臨床項目の調査を開始しており、これまでに目標の30人の唾液サンプルを採取した。本年度中に痛みと口腔がんの関連の解析を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は福岡でもCOVID-19の感染が広がり、歯科の受診控が生じた。そのため口腔がん患者の初診が減り、サンプル採取が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当科にて加療を行なった口腔がん患者30名の唾液サンプルを採取し、ゲノム解析を開始している。 病理組織標本でもTRPチャネル発現の解析を行なっていく。
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Causes of Carryover |
サンプルの採取が遅れたため、解析のために計上していた試薬や抗体の支出がなかった。緊急事態宣言下で学会出張がなかったため、計上していた旅費を支出しなかった。
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