2019 Fiscal Year Research-status Report
血管新生阻害薬使用患者における抜歯の安全性評価と治癒遅延予測バイオマーカーの確立
Project/Area Number |
19K19219
|
Research Institution | Hokkaido Cancer Center(Department of Clinical Research) |
Principal Investigator |
今待 賢治 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 歯科口腔外科医師 (40779873)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 血管新生阻害薬 / 抜歯 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は①血管新生阻害薬投与中のがん患者における抜歯の安全性を評価し創傷治癒遅延の頻度やリスクファクターを明らかにすること。②休薬の必要性や休薬期間などを検討して血管新生阻害薬投与中の抜歯に関する新たなガイドラインの重要なエビデンス確立すること。の2点である。本研究の令和元年度から1年間の研究実績を報告する。これまで血管新生阻害薬投与中における抜歯の創傷治癒についての研究報告はなかった。そこで、単一施設でのカルテ記録を用いた後ろ向き研究を行った。実際にはベバシズマブを使用した患者24名(抜歯67本)を対象とした調査を行い、有害事象(治癒遅延、後出血)が生じたのは24名中6名(25.0%)、67歯中11歯(16.4%)であり、この有害事象の発生頻度についてはベバシズマブ休薬・継続で有意差はなかった(p=0.35)。リスクファクターについて分析を行ったところ、併用化学療法では有害事象あり群においてタキサン系抗がん剤併用が83.3%と高頻度であった。また抜歯部位別では、有害事象あり群のうち下顎大臼歯が11歯中8歯で72.7%を占め、抜歯方法では有害事象あり群で難抜歯が45.5%と最も多く、他に骨削除などを必要とする埋伏抜歯や歯根嚢胞摘出などを含めると63.6%に上った。このことから、抜歯の際にベバシズマブの積極的な休薬は不要な可能性が示唆される結果となったが、有害事象の多い傾向にあった下顎大臼歯の侵襲的な抜歯症例などは休薬も考慮すべきと考えられた。本研究成果については第64回日本口腔外科学会総会にて報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第Ⅰ期研究において、ベバシズマブについては休薬・継続で有意差が無いことが分かった。しかしその中で抜歯創部についてどのような所見をもって治癒と判断するか、またどの時点で抜歯治癒と判定するかなどについては術者間でそれなりのばらつきを認めた。今後は多施設での前向き研究も行っていく予定であるため、抜歯治癒に関してある程度の共通した見解を示さなければならず、難渋している所である。
|
Strategy for Future Research Activity |
北海道大学大学院歯学研究院血管生物分子病理学教室とミーティングを行い、本研究、とくに創傷治癒遅延を予測するマーカーについての協力を取り付けることができた。当初の研究計画書ではHMGB1のみに着目して研究を進めていく方針としていたが、血管新生のbiomarkerとしてはまだ十分なコンセンサスが得られているとはいえず、HMGB1のみではなく、他のタンパクやbiomarkerも視野に入れて、研究を進めていく方針とした。具体的には抜歯時に採取する組織サンプルから純粋に血管組織の構造やマクロファージなどの血球系の局在などを検討し、血管新生阻害薬による炎症反応の変化なども踏まえて評価を進めていく方針とした。今後は北海道がんセンターでの倫理審査承認を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で2020年6月予定のMASCC/ISOOが延期となり、学会参加費などの計上を保留したため、使用残額が生じた。
|
Research Products
(2 results)