2021 Fiscal Year Research-status Report
血管新生阻害薬使用患者における抜歯の安全性評価と治癒遅延予測バイオマーカーの確立
Project/Area Number |
19K19219
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Research Institution | Hokkaido Cancer Center(Department of Clinical Research) |
Principal Investigator |
今待 賢治 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 歯科口腔外科医師 (40779873)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血管新生阻害薬 / 抜歯 / 治癒遅延 / 薬剤関連顎骨壊死 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は①血管新生阻害薬投与中のがん患者における抜歯の安全性を評価し創傷治癒遅延の頻度やリスク因子を明らかにすること。②休薬の必要性や休薬期間などを検討して血管新生阻害薬投与中の抜歯に関する新たなガイドラインの重要なエビデンスを確立すること。の2点である。単一施設での調査ではBVの継続群と休薬群では抜歯後有害事象について有意差は認めなかった(p=0.35)。リスク因子の検討ではタキサン系抗癌剤の併用で有意にリスクが上昇した(OR(オッズ比):17.50,p=0.018)。また、下顎大臼歯(OR:10.91,p=0.018)や、骨削除などを伴う外科的抜歯(OR:9.14,p=0.002)においても有意にリスクが上昇した。本研究成果については2021年6月にMASCC(Multinational Association of Supportive Care in Cancer)総会で報告した。 また、抜歯の有無に限らず歯科介入を行ったBV投与患者の調査も進めており、その中でBV単独投与による薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)が発生した症例が3例認めた。発生部位は下顎臼後部舌側、上顎大臼歯部口蓋側、口蓋隆起部であった。いずれも抜歯等を契機とせず、early srageで止まることが多く、治療に難渋するケースは少なかった。抜歯窩治癒遅延のメカニズムとも関連が深いと考えられ、今後も調査・研究を進める予定である。尚、MRONJ症例については、第66回日本口腔外科学会(2021年11月Web開催)にて報告した。 これまでの調査ではBV投与中の抜歯に関して休薬は不要である可能性が高いが、下顎大臼歯や骨削を伴う侵襲の大きな抜歯、タキサン系抗癌剤との併用がある場合には休薬を考慮する必要があると考えられる。どの程度の期間の休薬が最も有効なのかなどについては更なる検討が必要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
引き続き単施設において、対象を拡大して(抜歯有無に限らず、歯科介入を行ったBV投与症例)調査を継続している。その中で評価項目の検討や、必要な登録患者数など研究デザインの構築が難航している。多施設との共同研究も予定しているが、コロナ禍の今日にあって進めるのが困難な状況である。BV投与中における抜歯の安全性評価ということで、実際の臨床に即した内容のためWeb会議では充分な議論が難しいと考える。状況の改善みて個々の協力施設と評価基準など擦り合わせたいと考えている。また、バイオマーカーについては準備中で器材など揃えているが、抜去歯や周囲組織を用いる研究のため、倫理審査委員会の承諾に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が4月から北海道大学へ異動となった。当施設でも倫理審査承認を目指して、多施設研究への足掛かりとしたいと考えている。また口腔機能解剖学教室所属となったので、HMGB1および血管組織の構造やマクロファージなどの血球系細胞の組織学的検索を行う環境は整っている。抜去歯および抜歯窩から採取した組織サンプルについても北海道がんセンターならびに北海道大学での倫理審査承認を進めていく予定である。また、ベバシズマブ(BV)単独による薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)症例に関しても、発症部位などから抜歯後治癒遅延とも発症メカニズムなどについて共通する点も多い可能性が考えられる。今後もBVによるMRONJ症例を集積し、BVによる抜歯後治癒遅延症例と比較や、骨吸収抑制薬による顎骨壊死との比較・検討を行い、治癒遅延メカニズムやリスク因子の解明を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初2021年度は海外国際学会(MASCC 2021)に参加予定であったが、コロナ禍でWeb開催となり、旅費などの使用額が大幅に減額した。また、同様にその他の国内学会もコロナ禍でWeb開催となり、旅費などの使用額が減額した。また、2022年度は学会が現地開催になることが予想され、出張費に充てたいと考えている。次年度については、基礎的な研究も検討しており、その試薬による追加使用を予定している。また、本研究の成果を論文化する予定であり、そのための英語校正や論文投稿代にも充てる予定である。
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