2020 Fiscal Year Research-status Report
低ホスファターゼ症関連歯周疾患に関するiPS細胞とゲノム編集技術を用いた病態解析
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19K19228
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 知帆 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (30835856)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低ホスファターゼ症 / iPS細胞 / 象牙芽細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度より、低ホスファターゼ症に関連して発症する歯科疾患の病態を解明するための研究を行ってきた。 低ホスファターゼ症に見られる歯科的な特徴としては、象牙質、セメント質、エナメル質の形成不全などが報告されている。アルカリホスファターゼの活性が低下することが大きな原因と考えられているが、具体的な機序はまだ解明されておらず、その病態を解析することを目的として、研究を開始した。 (1)研究に必要な細胞株の選定と準備を行った。c.1559delTの低ホスファターゼ症患者由来のiPS細胞および健常人由来のiPS細胞はすでに作成されている。また、遺伝子変異について、片アレルのみ修復された株、両アレルともに修復された株についても得ることができた。 (2)今後の研究の流れについて、既報の論文やデータを分析し、得られたiPS細胞の分化誘導方法などについて、共同研究者らとミーティング、およびディスカッションを行った。また、今年度は自身が妊娠・出産をしたため、育児をしながらスムーズに研究を再開し、進めていくためのプランを、これらのミーティングを通じて共有することができた。特に、今回の研究で用いる分化誘導系について、早期に確立することが必要であるが、ヒトiPS細胞を用いた象牙芽細胞分化誘導方法の報告は非常に少なく、応用可能と思われる間葉系幹細胞を用いた方法などを多数分析し、複数の方法を準備して、予想される問題に対する対策についても用意することができたことは、今後実験を進めていくうえで、非常に有用であると思われる。 今後の展開としては、作成したiPS細胞を用いて、まずは象牙芽細胞をターゲットとして分化誘導を行い、その石灰化の違いを比較する予定である。また、象牙芽細胞のマーカーとなる遺伝子の発現レベルを調べ、各細胞株間での違いを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルスに伴う外出自粛を行ったため、当初の予定通り研究を進めることが困難であった。また、自身の妊娠、出産、その後の育児によって、一時研究を中断せざるを得なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず(1)今年度行うことのできなかった、iPS細胞の象牙芽細胞への分化誘導実験を進める。健常人由来、低ホスファターゼ症患者由来、および変異を修復したiPS細胞すべてにおいて、昨年度検討したプロトコールに基づいて、まず神経堤細胞に分化させ、細胞選別を行う。これらをさらに間葉系幹細胞へと分化し、その後象牙芽細胞分化培地にて象牙芽細胞への分化誘導を行う。間葉系幹細胞から象牙芽細胞への分化誘導については、自身では今回初めての試みあり、複数の方法を試す必要があると予想されるが、すでに既報の方法をいくつかピックアップ済みであり、速やかな分化誘導系の確立に努める。 さらに、(2)得られた象牙芽細胞の性質について、各細胞間で比較検討を行う。具体的には、石灰化の違いや象牙芽細胞のマーカーとなる遺伝子の発現を比較する。象牙芽細胞のマーカーとしては、Lim homeobox protein 6やdentin sialophosphoprotein、オステオカルシン、Ⅰ型コラーゲンなどを用いる予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナウイルスの影響により、外出自粛が求められていたため、細胞を用いた実験を行った場合に途中で一時中断せざるを得ない事態になることも考えて開始を差し控えていた。それに伴い、試薬や物品を購入する機会がなく、それらに充てる予定だった分が次年度使用額となった。また、自身の妊娠・出産およびその後の育児に伴い、研究を中断していたため、それも次年度使用額が生じた理由である。今後、本来予定していた実験を遂行していくにあたり、物品、試薬等の購入に充てる予定である。
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