2021 Fiscal Year Annual Research Report
低ホスファターゼ症関連歯周疾患に関するiPS細胞とゲノム編集技術を用いた病態解析
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19K19228
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 知帆 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (30835856)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2022-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 低ホスファターゼ症 / 組織非特異的アルカリホスファターゼ / セメント質形成不全 / 乳歯の早期脱落 / 象牙芽細胞分化誘導 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
低ホスファターゼ症(HPP)は組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)をコードするALPL遺伝子に変異が起こりその活性が低下することで骨の石灰化障害やそれに付随する全身症状を引き起こす遺伝性疾患である。歯科症状としては、乳歯の早期脱落が特徴的であり、主たる症状となることも少なくない。その他にも、象牙質やエナメル質の形成不全や永久歯の早期脱落の報告もあり、HPPの病態が歯や歯周組織の形成や形態に影響を及ぼしていることが強く示唆される。TNSALPは骨芽細胞や象牙芽細胞などの石灰化組織を構成する細胞で強く発現するが、その働きについては不明な点も多く、HPPにおけるTNSALPの活性低下が、乳歯の早期脱落や歯の形成不全などの口腔内症状にどのように関連するのかはまだ完全に解明されていない。 そこで、本研究では、HPPにおける歯科的疾患のメカニズム解明を可能にする病態モデル作製の足掛かりとして、HPP疾患特異的ヒトiPS細胞を用いた象牙芽細胞への分化誘導を試みた。これまでにヒトiPS細胞を用いた象牙芽細胞分化誘導の報告はなく、新しい誘導法が必要であったため、既報のiPS細胞の骨分化誘導法、および間葉系幹細胞の象牙芽細胞分化誘導法を応用し、3健常人由来ヒトiPS細胞を用いて象牙芽細胞誘導を行った。得られた細胞は、すべての株において象牙芽細胞の特徴を有していた。 さらにHPP患者由来iPS細胞を用いて象牙芽細胞分化を行ったところ、石灰化は認められなかったのに対し、ゲノム編集技術を用いてHPPの原因変異を修復した細胞では、石灰化が確認された。 今後は象牙芽細胞のマーカーとなる遺伝子やタンパク質の発現を評価して、象牙芽細胞誘導についての評価を行うことでこの誘導法が有効であることをより確実にしながら、HPPに関する口腔内疾患について病態の解明を進めていく予定である。
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