2019 Fiscal Year Research-status Report
内軟骨性骨化における軟骨細胞死の誘導機構:CCN2によるレドックス制御とその破綻
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19K19232
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村瀬 友里香 岡山大学, 大学病院, 医員 (70803708)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | CCN2 / 軟骨 / 細胞死 / ROS / 内軟骨性骨化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内の活性酸素種(ROS)が、肥大軟骨細胞の細胞死を誘導するとの報告があるが不明な点が多く、そのメカニズムを解明することは重要である。本研究では、「軟骨細胞の分化終末期において、CCN2の発現低下が、軟骨細胞内のROSレベルを上昇させ細胞死を誘導する」という仮説を検証する。 本年度は、CCN2によるSOD2の発現制御を介した細胞内ROSレベルの制御機構を調べること、細胞内ROSレベルの上昇がCCN2に及ぼす影響を調べることを目的とした。 ヒト軟骨細胞様細胞株HCS-2/8において、CCN2の発現を変動させたが、細胞内ROSレベルは変動しなかった。CCN2過剰発現系において、SOD2の発現変動は認められなかった。しかし一方で、SOD2の発現を正に制御することが知られているVASH1を過剰発現させると、細胞内ROSレベルが低下した(今後、再現性を確認予定)。以前に申請者は、軟骨細胞においてCCN2の発現を低下させると、VASH1およびSOD2の発現が低下すると報告している。以上より、CCN2の発現低下がVASH1-SOD2の発現低下をもたらし、細胞内ROSレベルを上昇させる可能性が推測される。 また、同培養系で、培地に過酸化水素またはROS阻害剤N-acetyl-L-cysteineを添加したが、細胞内ROSレベルの変動およびCCN2の発現変動は認められなかった。しかし興味深いことに、Glucose (-)培地で培養すると、CCN2の発現低下を認めた。ROSは、糖代謝の最終段階である電子伝達系で主に産生される。以前に申請者は、CCN2欠損軟骨細胞は解糖系が抑制されていると報告している。そのため、今後は、糖代謝が細胞内ROSレベルの制御を介してCCN2の発現を制御する可能性や、CCN2が糖代謝の制御を介して細胞内ROSレベルを制御する可能性についても追究する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、①CCN2によるSOD2の発現制御を介した細胞内ROSレベルの制御機構、②①の破綻がもたらす細胞死様式とその誘導機構を解明することを目的としている。 本年度は、①の課題に対して取り組み、軟骨細胞においてCCN2の発現低下がVASH1-SOD2の発現低下をもたらし、細胞内ROSレベルを上昇させることを示唆する結果を得た。しかし、細胞内ROSレベルの測定において、バックグラウンドが高いという問題が生じ、評価等が難渋したため、同結果を支持するレスキュー実験等の次なる実験が行えなかった。そのため、進捗状況はやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. CCN2またはSOD2の発現低下が細胞内ROSレベルに及ぼす影響を調べる:HCS-2/8において、VASH1発現ベクターのtransfectionによる細胞内ROSレベルの低下が、CCN2またはSOD2をノックダウンするsiRNAとのco-transfectionにより打ち消されるかを検証する。 2. 糖代謝とROSとCCN2の制御連関を調べる:HCS-2/8をGlucose(-)培地で培養し、細胞内ROSレベルが上昇するかを検証する。また同条件でもたらされるCCN2の発現低下が、ROS阻害剤N-acetyl-L-cysteineにより打ち消されるかを検証する。さらに、HCS-2/8において、CCN2の発現低下が、電子伝達系の活性化を介して、細胞内ROSレベルの上昇をもたらすかを検証する。 3. CCN2による細胞内ROSレベル制御の破綻がもたらす細胞死誘導機構を調べる:HCS-2/8において、CCN2の発現を低下させて、各細胞死(アポトーシス、オートファジー細胞死、フェロトーシス)が誘導されるか否かを検証する。オートファジーはオートファジーマーカーの変動、フェロトーシスは細胞内Fe2+および脂質過酸化の増加で検出する。さらに、誘導された各細胞死がROS阻害剤N-acetyl-L-cysteineにより打ち消されるかを検証する。 4. CCN2による細胞内ROSレベルの制御が成長板軟骨組織に及ぼす影響を調べる:CCN2ノックアウトマウス由来の成長板軟骨組織切片を用いて、SOD2の発現低下、酸化レベルや細胞死マーカーの亢進を認めるかを検証する。また、CCN2トランスジェニックマウス由来の成長板軟骨組織切片を用いて、逆の結果を認めるかを検証する。
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Causes of Carryover |
1. 進捗状況がやや遅れているため:本年度実施予定であったができなかった実験(本年度実績報告書の今後の推進方策1. に記載している実験)を次年度実施するため、当該費用として支出する予定である。 2. 研究の進展に伴い、当初予期し得なかった新たな知見が得られ、より高度な研究成果が期待できるこの新たな知見の分析を行う研究計画の追加・変更が必要になったため:本年度実績報告書の今後の推進方策2. に記載している実験を次年度実施するため、当該費用として支出する予定である。
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Research Products
(1 results)