2020 Fiscal Year Research-status Report
内軟骨性骨化における軟骨細胞死の誘導機構:CCN2によるレドックス制御とその破綻
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19K19232
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村瀬 友里香 岡山大学, 大学病院, 医員 (70803708)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CCN2 / 軟骨 / 細胞死 / ROS / 内軟骨性骨化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の計画は、昨年度に引き続いて、CCN2の発現低下が細胞内ROSレベルに及ぼす影響、細胞内ROSレベルの上昇がCCN2の発現に及ぼす影響を調べること、また新たに、CCN2による細胞内ROSレベル制御の破綻がもたらす細胞死誘導機構、CCN2による細胞内ROSレベルの制御が成長板軟骨組織に及ぼす影響を調べることであった。 ヒト軟骨細胞様細胞株HCS-2/8において、0.1, 0.5 mM過酸化水素を添加して1時間培養し、培地交換後12, 24時間でCCN2の発現を評価すると、0.1 mM過酸化水素添加群では、12時間で亢進し、24時間で低下したが、0.5 mM過酸化水素添加群では、時間依存的に低下した(今後、再現性を確認予定)。軟骨細胞の分化の進行に伴って、細胞内ROSレベルは上昇すると報告されている。以前に申請者らは、CCN2の発現は、軟骨細胞の分化の進行に伴って上昇するが、分化終末期には低下すると報告している。以上より、軟骨細胞の分化の進行に伴って上昇する細胞内ROSレベルに応じて、CCN2の発現が変動する可能性が推察される。 HCS-2/8において、CCN2の発現を低下させると、アネキシンⅤ陽性/ヨウ化プロピジウム陰性細胞(初期のアポトーシス細胞)が増加した。また、この結果は、ROS阻害剤N-acetyl-L-cysteineにより打ち消された。以上より、軟骨細胞の分化終末期におけるCCN2の発現低下は、細胞内ROSレベルの上昇を介してアポトーシスを誘導する可能性が推測される。 野生型マウスの成長板軟骨組織切片において、活性酸素分解酵素SOD2は、CCN2と同様に肥大軟骨細胞層に局在した。今後は、CCN2ノックアウトおよびトランスジェニックマウスの同切片を用いて、SOD2、酸化マーカー、アポトーシスマーカーのシグナル強度や局在が変動するかを検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、昨年度に引き続いて、①CCN2の発現低下が細胞内ROSレベルに及ぼす影響、細胞内ROSレベルの上昇がCCN2の発現に及ぼす影響を調べること、また新たに、②CCN2による細胞内ROSレベル制御の破綻がもたらす細胞死誘導機構、CCN2による細胞内ROSレベルの制御が成長板軟骨組織に及ぼす影響を調べることを計画していた。 ①の課題に対しては、軟骨細胞において、過酸化水素による細胞内ROSレベルの上昇はCCN2の発現を変動させるという結果を得た。しかし、CCN2の発現低下が細胞内ROSレベルに及ぼす影響を調べる実験は、細胞内ROSレベルを検出する蛍光色素が劣化しやすいために短期間で集中して行う必要があったが、研究実施場所の工事日程が長期間決まらず実験日程を立てることが困難で、開始が大幅に遅れ、結果を出すに至らなかった。 ②の課題に対しては、軟骨細胞において、CCN2の発現低下は細胞内ROSレベルの上昇を介してアポトーシスを誘導するという結果を得た。しかし、CCN2による細胞内ROSレベルの制御が成長板軟骨組織に及ぼす影響を調べる実験は、COVID-19感染症の流行に伴う実験・研究の中断(社会情勢を考慮した研究施設の方針に基づく)、研究実施場所の工事・変更により、着手することが困難であった。 以上より、進捗状況はやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. CCN2の発現低下が細胞内ROSレベルに及ぼす影響を調べる:HCS-2/8において、CCN2の発現をノックダウンするsiRNAをtransfectして、細胞内ROSレベルが上昇するかを検証する。また、その結果がSOD2発現ベクターとのco-transfectionにより打ち消されるかを検証する。 2. 細胞内ROSレベルの上昇がCCN2の発現に及ぼす影響を調べる:本年度実施したHCS-2/8への過酸化水素添加実験系において、CCN2の発現が条件に応じて再現性よく変動するかを検証する。また、CCN2の発現が再現性よく変動する条件において細胞内ROSレベルを測定し、細胞内ROSレベルとCCN2の発現が相関するかを検証する。 3. CCN2による細胞内ROSレベルの制御が成長板軟骨組織に及ぼす影響を調べる:CCN2ノックアウトマウスの成長板軟骨組織切片を用いて、SOD2のシグナル強度が低下するか、酸化マーカー、アポトーシスマーカーのシグナル強度が亢進するかを検証する。また、CCN2トランスジェニックマウスの成長板軟骨組織切片を用いて、逆の結果を認めるかを検証する。
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Causes of Carryover |
進捗状況がやや遅れているため:研究実施場所の工事・変更、COVID-19感染症の流行に伴う研究の中断(社会情勢を考慮した研究施設の方針に基づく)により、本年度実施予定であったができなかった実験を次年度実施し、さらに、社会情勢を考慮して参加を自粛していた学会・研究会で研究成果を発表するため、当該費用として支出する予定である。
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