2021 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の免疫制御機構を応用した新たな難治性顎骨壊死根治療法樹立の試み
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19K19242
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
小松 祐子 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (90781625)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ARONJ / 骨粗鬆症 / 悪性腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性顎骨壊死の治療法は定まっていないことから、医療施設により治療方針のばらつきが認められている。そこで、顎骨骨髄炎を発症した臨床患者の診療情報を収集し、病態別に慢性硬化性骨髄炎、放射線性骨髄壊死、骨吸収薬製薬関連顎骨壊死(ARONJ)に分類した。さらに、個々の病態を解析することにより、発症誘因や予後不良因子の特定に努めた。本年度は特にARONJに着目し、さらには同疾患を主な原疾患としての骨粗鬆症と、悪性腫瘍とに症例を分類することにより、母集団のばらつきを可及的に排除した条件下で比較を行った。その結果、骨粗鬆症群においては一定の結果が得られたため、論文報告を行った。なお、悪性腫瘍群においても調査結果を論文報告する準備を進めている。 一方、in vitroの研究に関しては、間葉系幹細胞(MSC)が有する組織再生能や抗炎症能を医療応用した細胞治療の樹立が期待されていることから、難治性顎骨壊死病巣におけるMSCの組織再生性・抗炎症性の働きを明らかにすべく調査を実施した。まず、MSCの単独培養においては抗炎症性サイトカインとして知られるTGF-βや炎症性サイトカインとして知られるIL-6などの高い発現が確認された。また現在、これらのサイトカインが、MSC周囲の炎症性顎骨組織から萌出されるその他のサイトカイン等の刺激により、その発現量が変動するかどうかについての調査も進めているところである。加えて、炎症性顎骨組織内への炎症性細胞や抗炎症性細胞のホーミング機構の詳細についても明らかとすべく、炎症性環境下のMSCから萌出されるどのようなケモカインによってMSC自身、好中球、炎症性M1マクロファージあるいは抗炎症性M2マクロファージが患部へホーミングするかについて、そのケモカイン分子の特定を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床研究としては一定の結果がえられているが、in vitroでは未だ推論の域を出ずMSCを主とした各種サイトカインの発現観察の準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのin vitro実験でピックアップされたMSC由来サイトカインやケモカインが、実際に炎症性顎骨組織の治癒に影響を及ぼすかどうかについて明らかとするため、in vivoでの調査を実施する。すなわち、BPを投与した難治性顎骨壊死モデルマウスにおいて、組織修復機能と免疫調節機能を合わせ持つMSCが、炎症性顎骨組織内でどのような影響を受けるのかについて、分子レベルで明らかにする。具体的には、難治性顎骨壊死モデルマウスの患部周囲の軟組織を採取し、患部で発現するサイトカインやケモカインについてmRNAレベル及びタンパク質レベルで明らかにする。加えて、赤色あるいは緑色蛍光発現MSCを難治性顎骨壊死モデルマウスの腹腔内あるいは経血管的移植を実施し、その後に患部周囲の軟組織を採取して蛍光顕微鏡観察することにより、MSCの患部へのホーミング状況について確認する。また、そのホーミング後のMSCが、免疫担当細胞のホーミング能や抗炎症能にどのように影響するのかを調査すべく、M1あるいはM2マクロファーシジの患部への集積状況について、組織学的に調査する予定である。
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