2020 Fiscal Year Research-status Report
4次元咀嚼運動解析システムを用いた鼻呼吸障害を改善すべき適正時期の解明
Project/Area Number |
19K19260
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
阿部 泰典 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野, 非常勤講師 (20822513)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 成長期 / 鼻呼吸障害 / 咀嚼野 / 咀嚼運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
成長期の鼻呼吸障害は顎顔面領域の形態形成や運動制御機能、記憶や学習機能に障害を与えることが明らかになっている。当研究室は過去に成長期の鼻呼吸障害が大脳皮質一次運動野の成長発育に障害を与えることを報告している。本年度は成長期鼻呼吸障害が大脳皮質一次運動野とともに顎運動や咀嚼運動といった半随意運動の制御に関わる大脳皮質咀嚼野に与える影響の解明を試みた。皮質咀嚼野は咀嚼運動を制御し、リズミカルな顎の動きに重要な役割を担うとされる一方で、成長過程における鼻呼吸障害がどのような影響を及ぼすか明らかになっていない。本研究では成長期ラットで慢性的鼻呼吸障害を再現し、成長期鼻呼吸障害が皮質咀嚼野の発達および皮質咀嚼野の電気刺激により引き起こされる咀嚼運動の発達に及ぼす影響を解明した。 皮質咀嚼野の刺激には皮質内微小電気刺激を用い、皮質咀嚼野の電気刺激により引き起こされる咀嚼運動の解析には筋電図を用いた。鼻呼吸障害群では皮質咀嚼野領域は有意に減少が認められた。咀嚼運動野の電気刺激により引き起こされる咀嚼運動に有意な変化は認められなかった。これらの結果より成長期鼻呼吸障害は中枢の大脳皮質咀嚼野の発達に影響を与える一方で、末梢の咀嚼運動には影響を及ぼさない可能性が示唆された。咀嚼運動の指令が中枢から末梢へ伝達される過程でなんらかの修飾や補償が働いたと考えられ、今後さらなる解明を行う必要がある。 本研究成果より成長期鼻呼吸障害が咀嚼運動に与える中枢性および末梢性の影響が明らかになり、成長期鼻呼吸障害が顎顔面領域の形態形成に障害を与えるメカニズム解明の一助になると考えられる。本研究成果を国際矯正歯科会議世界大会で発表した。さらに現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた大脳皮質咀嚼野(A-area、P-area)の同定および電気刺激の最適パラメーター、生理学的記録手法が確立し、当初想定していた記録データを得ることができおおむね順調に進んでいる。ただし、世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により学会が中止やWeb開催となってしまい、現地での交流を通じた意見交換を行う機会が減ってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に則り引き続きデータ取得と解析を行う。補償メカニズム解明のため、生化学的、形態学的な解析の検討や他領域の解析を検討する。得られた知見は学会発表や論文発表を通じて広く社会に発信していく。
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Causes of Carryover |
導入機器が当初想定した価格より安く導入できたことや学会が中止やWeb開催となったことで当初想定した旅費の支出がなかったため。翌年度分は生化学的解析に必要な実験機材に充てる。
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