2019 Fiscal Year Research-status Report
顎関節滑膜細胞の破骨細胞誘導機構に着目した新たな変形性顎関節症治療戦略
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19K19277
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
横田 聖司 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (50802401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 変形性顎関節症 / 滑膜細胞 / ダメージ関連分子パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞株fibroblast-like synoviocytes (FLS) (Int. J. Mol. Med., 39:799-808, 2017) におけるダメージ関連分子パターンdamage-associated molecular pattern (DAMPs)(ATP、ADP、UTP)に対する受容体の発現をRT-qPCR法により明らかとした。その結果、P2Y2、P2Y4、P2Y13がFLS細胞において線維形成を抑制することが特定された。またDAMPsの一つであるATPをFLS細胞に作用させたところ、ケモカインMCP-1の発現がmRNAレベルで有意に上昇した。 変形性顎関節症(temporomandibular joint-osteoarthritis: TMJ-OA)のDAMPsによる無菌性炎症にはケモカインMCP-1を介してマクロファージが遊走し、炎症を増悪させる可能性があることが示唆された。現在マイグレーションアッセイを利用してATP刺激FLS細胞を下側培養トレイに、血球系細胞であるRAW264.7細胞を上側チャンバーに培養し、MCP-1に対する中和抗体を作用させることによりRAW264.7細胞の走化性が抑制されるか調査中である。 また変形性顎関節症における骨の変形や吸収には、顎関節周囲にケモカインが働き、マクロファージなどの炎症性細胞が遊走し、炎症性サイトカインの放出あるいは破骨細胞への分化・活性化が関与することが予測される。今後はFLS細胞において、ケモカインにより遊走されたマクロファージが破骨細胞への分化・活性化に関与する液性因子あるいは接着因子を調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変形性顎関節症の症状の一つである線維症の発症機序についてはFLS細胞における線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor: FGF)-1を作用させることにより筋線維芽細胞マーカーであるα-SMAの発現が有意に減少していることを報告している(Int. J. Mol. Med., 39:799-808, 2017)。 さらにFGF-1と同様の受容体チロシンキナーゼを活性化することが知られている上皮成長因子(epidermal growth factor: EGF)でも、FLS細胞ではα-SMAの発現が有意に減少していることを報告し、そのシグナル伝達経路がERK経路であることも報告した(Exp. Ther. Med., in press 2020)。 交付申請書に記載した1) FLS細胞をDAMPsで刺激した際のケモカインの探索、においてはFLS細胞にATPを作用させると、線維形成抑制効果を示しさらにFGF-1およびEGFを併用することでその効果が増強されることも確認した。またFLS細胞において各種DAMPsに対する受容体の発現をRT-qPCR法により確認しその受容体がP2Y2、P2Y4、P2Y13であることを明らかとした。さらにその受容体に対応するATPでFLS細胞を刺激した際のケモカインMCP-1の発現量もmRNAレベル上昇していることを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
変形性顎関節症は、滑膜組織の慢性炎症を伴う軟骨の変性、下顎頭の骨の変形や顎関節の線維症など様々な症状を引き起こし、その治療法はスプリントやステロイド性抗炎症薬の投与など対症療法が主体となっている。これまでに我々は変形性顎関節症の線維症において、FGF-1ならびにEGFが線維症の抑制効果があり、その効果はDAMPsのひとつであるATPにより増強されることを報告している。つまり、FGF-1ならびにEGFがTMJ-OAに伴う線維症を予防するための薬剤候補となる可能性があることが示唆された。しかし、FLS細胞においてATPがどのようなシグナル伝達経路で線維形成を抑制しているのかは不明なままである。 さらに軟骨及び骨の吸収や変形には破骨細胞の局所への出現が必須であり、これまでに我々はFLS細胞においてATPを作用させることにより破骨細胞の前駆細胞である単球やマクロファージの遊走能が促進することを明らかとしている。しかし、マクロファージが破骨細胞に分化・活性化する際に密接に関与するM-CSFをはじめとする液性因子や接着因子がFLS細胞からどのように発現しているのかは不明なままである。 今後はATPの細胞内シグナル伝達経路の解明および、 FLS細胞が破骨細胞の分化・活性化にどのように影響しているのか解明すべく調査をすすめる。
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Research Products
(2 results)