2019 Fiscal Year Research-status Report
原発性萌出不全特異的iPS細胞を用いた疾患発症機序の解明
Project/Area Number |
19K19278
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
泉田 恵理 昭和大学, 歯学部, 助教 (70783497)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原発性萌出不全 / 副甲状腺ホルモン / 副甲状腺ホルモン受容体 / 遺伝子変異 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性萌出不全(PFE)は側方歯開咬を特徴とする成長障害で、発症機序は不明である。本学歯科病院矯正歯科を受診した4名のPFE患者のエクソーム解析を行い、副甲状腺ホルモン(PTH)/PTH関連ペプチド受容体(PTH1R)遺伝子にそれぞれ356C>T (P119L)、395C>T (P132L)、439C>T (R147C)、1148G>A (R383Q)のミスセンス変異を同定した。そこで本研究では、これらの変異PTH1RをPTH1Rを発現していないHeLa細胞に強制発現させた細胞と我々が樹立したPFE患者由来のiPS細胞を用いて、PFE発症機序の解明を目指している。野生型および4種類の変異PTH1R遺伝子を導入したHeLa細胞でPTH1Rタンパク質の発現が確認された。P119LあるいはP132Lのアミノ酸置換を持つPTH1RではN-グリコシル化が抑制されていた。P119LあるいはP132Lの変異PTH1Rを発現した細胞では、PTH刺激後のcAMP産生が野生型PTH1R発現細胞に比べ低下していた。一方、PFE特異的iPS細胞を骨芽細胞分化培地で培養したところ、対照iPS細胞と同様に石灰化結節を形成したことから、骨芽細胞への分化能に顕著な違いはないと考えられた。また、PFE特異的iPS細胞由来の骨芽細胞様細胞は対照iPS細胞由来の骨芽細胞様細胞と比較して、PTHに対する反応性は低い値を示した。以上より、PFE患者で見出されたPTH1Rの変異の一部はPTH下流のシグナルを直接低下させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PFE患者で同定された変異PTH1Rを発現させたヒト細胞においてPTHに対する感受性の低下が観察された。さらに患者iPS細胞から誘導した骨芽細胞様細胞において、PTHに対する感受性の低下が観察された。これらの結果は、我々の仮説を支持しており、PFEの発症にPTH1Rの変異が機序関与することを強く示唆するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
患者および非患者のiPS細胞から誘導した骨芽細胞様細胞を用いてPFEの発症機序の解析を進める。具体的には、PTHおよびそれ以外の骨吸収因子、例えば、活性化型ビタミンDなどによる、PTH1R下流のcAMP産生および破骨細胞分化誘導因子RANKLの発現誘導を調べることで、PTH特異的な細胞応答についてPTH1Rの変異の影響を調べる。
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Causes of Carryover |
iPS細胞の培養系を年度を跨いで維持しなければならない。そのためにiPS細胞用の培地・試薬類、培養器具を継続して購入しなければならいため、その費用を次年度使用額とした。
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