2019 Fiscal Year Research-status Report
Dscr1が骨芽細胞の遺伝子発現調節機構に与える影響の解明
Project/Area Number |
19K19287
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
笠原 由紀 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (50822558)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Dscr1 / ダウン症候群 / 骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、ダウン症候群患者に顎顔面形態の不調和が起こることから、ダウン症候群の原因となる21番染色体(トリソミー)状にコードされるDown syndrome critical region1(Dscr1)のカルシニューリン阻害活性に着目し、骨形成への関与を検討する。ダウン症の病態原理解析により「骨形態形成不全への新たな治療標的の探索」を目標とした。具体的には、Dscr1バリアント特異的な発現変調が骨芽細胞にいかなる影響をもたらすか?さらには、骨代謝機能にいかなる変化を与えるか?を解明することである。 本研究の初年度は、以下の三点について検討した。1.骨芽細胞株TMS-12を用いてDscr1.v1およびDscr1.v2の発現調節機構についてWestern blotting法を用いた検討、2.Dscr1.v1 またはv2 を過剰発現させたTMS-12株の樹立および分化誘導実験、3.Dscr1タンパクの機能発現領域の特定を目的としたDscr1変異体安定株の樹立を行った。それぞれについて以下の成果を得た。1.これまでに得ていた転写レベルと同様の結果を得たことから、Dscr1のバリアント特異的な機能と骨の形態形成に何らかの関係があるのではないかと推察された。2.ウィルスベクターによる導入法を用いてDscr1.v1およびDscr1.v2過剰発現株を樹立した。石灰化能および破骨細胞支持能にについては検討中である。3.ウィルスベクター法を用いてDscr1変異体安定株を6種樹立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
骨芽細胞におけるDscr1.v1およびDscr1.v2の発現調節機構について、骨芽細胞株TMS-12を用い、細胞内cAMP濃度を上昇させた際のDscr1.v2タンパク発現量の変化をWestern blotting法を用いて同定した。また、TMS-12にウィルスベクタ―法によりDscr1.v1およびDscr1.v2を過剰発現させた安定発現株を樹立した。樹立した安定発現株を用いて、石灰化能を確認した。加えて、Dscr1.v1およびDscr1.v2タンパクのN末端領域のアミノ酸に変異を導入するためDscr1遺伝子を部位特異的遺伝子変異導入法により作成した。その後、ウィルスベクターによる導入法を用いてDscr1変異体安定発現株の樹立を目指したが、変異体8種のうち5種についてのみ樹立した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度、研究を推進していくために以下の方策を実行する予定である。 1.必要なDscr1変異体安定発現株の樹立 2.変異体Dscr1変異体安定発現株を用いた石灰化能および破骨細胞支持能の検討 3.Dscr1変異体安定発現株に蛍光タンパクとNFATの複合タンパク質を安定発現し、標的分子の解析を行う。
|
Causes of Carryover |
初年度の研究計画としてDscr1.v1またはDscr1.v2過剰発現骨芽細胞株およびDscr1変異体安定発現株の作成後に、石灰化能および破骨細胞支持能について検討を行う予定であった。Dscr1変異体安定株について、バリアント間にて異なる排列をもつN末端領域のアミノ酸に変異を導入した株を変異部位を変えて8種類の株の樹立を目指したが、そのうち3種において安定的な発現が認められなかった。そのため、初年度中には石灰化能および破骨細胞支持能についての検討が行えず細胞培養試薬、細胞培養用器具およびマウス飼育維持費について減額が生じた。次年度の使用計画としては、Dscr1変異体安定株の作成を再度試み、樹立後に石灰化能および破骨細胞支持能についての検討を行いたい。
|