2020 Fiscal Year Research-status Report
矯正力に対する歯根膜の部位特異的な組織応答メカニズムの解明
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19K19288
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
北見 公平 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20804579)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯根膜 / 矯正学的歯の移動 / プライマリーシリア |
Outline of Annual Research Achievements |
歯根膜は生体の中でも力学的負荷に対して極めて鋭敏に反応する組織であり、歯周組織の恒常性維持に寄与している。しかし、歯根膜の細胞がどのように力学的負荷を感知し、歯周組織の維持・改変を制御しているかについては依然として明らかでない点が多い。本研究は細胞表面に突出し、シグナル受容体が集積するプライマリーシリアの組織内偏在に着目し、力学的負荷による部位特異的な組織改変メカニズムを明らかにしようとするものである。 マウス歯根膜組織において、プライマリーシリアの存在が確認され、歯槽骨側と比較して歯根側に高頻度に観察された。クローズドコイルスプリングを用いた矯正学的歯の移動モデルマウスの組織解析から、矯正力負荷後の歯の移動開始に伴い、プライマリーシリアの発現頻度は減少傾向にあった。化学的刺激受容器だけでなく、機械的刺激受容器としての可能性も報告されているプライマリーシリアの偏在は、歯根膜組織の力学的負荷に対する部位特異的な応答能に寄与している可能性を示唆している。一方で、プライマリーシリアの化学的受容器としての機能として特に研究が進んでいるのが、ヘッジホッグシグナル経路である。矯正学的歯の移動モデルマウスの歯根膜において、ヘッジホッグシグナル経路の活性化マーカーであるGli1の発現について免疫組織化学的に解析を行った。コントロール群において歯根膜組織内全体にGli1陽性細胞は分布しており、矯正学的歯の移動に伴い発現率は減少傾向にあったものの、分布領域についてプライマリーシリアの発現部位との強い相関は確認されなかった。 高精度な解析を行うべく、遺伝学的手法を用いた解析用マウスの作製を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ヘッジホッグシグナル経路の主要活性化マーカーの一つであるGli1の発現について、前年度までの解析で歯根膜プライマリーシリアの発現部位との強い相関が見いだせなかった。これは力学的負荷を積極的に受ける歯根膜組織のプライマリーシリアが、これまで研究の進んでいる機構とは別の機構で機能していることを示唆している。さらなる解析が必要であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、使用する実験動物の管理運営上、規模を縮小せざるを得なくなり、実験が大幅に停滞した。
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Strategy for Future Research Activity |
歯根膜プライマリーシリアに関連すると思われるシグナルタンパク等の検討を進めている。 また、プライマリーシリアを遺伝学的に欠失するマウスを作製するため、歯根膜特異的に遺伝子組み換え酵素Cre-recombinaseを発現すると考えられるPostn-MCMマウスと、レポーターマウスを交配させ、Cre-recombinase発現条件を確認中である。発現条件が整い次第、すでに準備が整っているプライマリーシリア関連タンパクに組み換え標的配列を持つ2系統のマウスを交配する。時空間特異的にプライマリーシリアを欠失するマウスを作成し、矯正学的歯の移動に伴う組織改変におけるプライマリーシリアの機能を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、使用する実験動物の管理運営上、規模を縮小せざるを得なくなり、研究活動が大幅に停滞した。次年度使用分として動物の管理維持費および組織学的解析に使用する物品購入費として計上する。
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