2020 Fiscal Year Annual Research Report
ノシセプチンに着目した矯正歯科治療時の疼痛メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K19300
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
左合 美紗 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40815825)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歯科矯正 / 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正治療中の患者の大半が歯の移動による疼痛を感じており、疼痛により矯正治療を断念する患者も存在する。矯正力を加えた1日後に痛みはピークとなり、その後徐々に軽減していく。矯正治療による疼痛は早急に解決するべき問題であるが、その詳細なメカニズムは明らかではない。これまで、ニッケルチタンコイルスプリングを用いた実験的歯の移動モデルが多く開発されているが、持続的な矯正力が加わるにも関わらず、疼痛が消失するメカニズムについての報告はない。オピオイド関連受容体の内在性リガンドとして発見されたノシセプチンとその受容体は、痛みを中心とする感覚線維受容部位に発現し、その受容部位により内因性に発痛および鎮痛作用を有する。本研究では、ノシセプチンと矯正力による疼痛との関連性に焦点を当て、疼痛が消失するメカニズムとノシセプチンの関連性を明らかにすることを目的とした。 2019年度は、実験的歯の移動モデルラットを作製し、疼痛関連行動の経日変化を評価した。侵害受容行動は1日目および2日目で有意に延長した。さらに矯正力を付与して5日目の疼痛抑制は、内因性オピオイドによるものではないことが示唆された。 最終年度は、高い酸化感受性を持ち侵害受容に関与するTRPA1チャネルに着目し、疼痛関連行動を評価した。その結果、矯正力による誘発される初期の疼痛にはTRPA1の活性化が寄与していることが示唆された。本研究の成果は既存の治療薬とは異なる機序で作用し、患者が最も苦しむ初期の疼痛に応用し、新規治療法の開発に役立つ可能性が期待される。以上の結果を学会発表および論文にて発表した。
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