2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of alveolar bone grafting with neural crest-derived cells in the maxillofacial regio
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19K19303
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
吉田 寛 昭和大学, 歯学部, 助教 (20823074)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経堤由来細胞 / 骨再生 / 頭蓋骨欠損モデルマウス / ラマン分光法 / アテロコラーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
唇顎口蓋裂に起因する歯列不正の矯正歯科治療の一環として、顎裂によって分断された歯列の連続性を獲得するため、就学前後に顎裂部への骨移植術が実施される。一方で、唇顎口蓋裂患者において鼻閉の原因でしばしば切除される肥大や下垂した鼻甲介には、特に神経堤由来細胞が多数分布する。 本研究は、頭蓋顎顔面に多量に存在する神経堤由来細胞を用いた骨誘導法を確立することで、唇顎口蓋裂患者への顎裂部骨移植術の開発を行うことを目的としている。顎裂部骨移植術に頭蓋顎顔面領域の神経堤由来細胞を想定した骨誘導研究はこれまでに報告が無い。加えて本研究に用いる神経堤由来細胞の採取組織は、口唇口蓋裂治療の一連の流れの中で破棄される下鼻甲介から採取することができ、また細胞の十分な量の増殖も期待できる。 本研究で用いる頭蓋顎顔面由来神経堤由来細胞は、低侵襲かつ安全、豊富に採取でき、顎顔面の大半を構成する組織幹細胞群であり、患者自身から採取するため倫理的問題や免疫拒絶反応を回避できる点から、実現可能かつ理想的な細胞ソースと考えられる。 マウス頭蓋骨へ人工的に骨欠損を作成し、欠損部へ神経堤由来細胞を含んだ担体を埋入し、12週間の経過観察を行った。術後12週間で、頭蓋骨欠損部で骨様組織の誘導に成功し、その化学的性質と物理学的性質について着目し既存の骨と比較した。結果として、神経堤由来細胞を含んだ担体をマウス頭蓋骨へ移植することによって、神経堤由来細胞を含まない担体をマウス頭蓋骨へ移植するよりも修復された骨が既存の骨と類似した性質を持つことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、①神経堤由来細胞を鼻甲介から採取・単離し、骨芽細胞分化誘導培地で誘導後、遺伝子発現から細胞分化を評価。②神経堤由来細胞の骨芽細胞分化誘導の最適条件となる種々の因子を担体内に投与することで再現し、その効果の検討。③神経堤由来細胞存在下、非存在下でそれぞれの誘導骨組織からRNAを抽出し、Runx2やOsterixなどの代表的な骨芽細胞関連遺伝子発現量の比較。加えて神経堤由来細胞存在下、非存在下で誘導された骨組織を採取し、DNAマイクロアレイ法による比較。④抽出した候補遺伝子の役割を解析するため、マイクロアレイ法を用いて、siRNAなどの遺伝子発現制御実験を1)の神経堤由来細胞の培養系に応用し、分化に及ぼす影響を検証。⑤研究の最終目標である顎裂骨移植を想定した、神経堤由来細胞混入のアテロコラーゲンスポンジを口蓋裂モデル動物に移植しその有用性を検討。口蓋に人工的な骨欠損を作り、神経堤由来細胞混入のアテロコラーゲンスポンジ、あるいはスポンジのみを移植し、それぞれμCT撮影で経時的変化を追う。評価については前述の(3)研究期間内の研究計画2)~4)と同様の方法で評価。以上の5段階となっている。現在までの進捗状況として、①の実現および②の再現性についての検証を行った。本研究は、Biochemical and Biophysical Research Communicationsにおいて「Neural crest-derived cells in nasal conchae of adult mice contribute tobone regeneration」として掲載されており、神経堤由来細胞を含んだ担体を人工的に作成した骨欠損へ埋入することによって神経堤由来細胞のみの骨再生へ及ぼす影響を比較することを可能とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、②の最適条件の検討および担体への投与を用いた飛躍的な骨再生を目指し、同時に③の神経堤由来細胞による再生骨のRNA抽出を用いた骨芽細胞関連遺伝子発現量の比較およびDNAマイクロアレイを用いた比較を予定する。これらは掲載した論文を用いて再現性を担保し、比較検討していく。上記の実験に加え、研究の最終目標である顎裂モデルマウスに神経堤由来細胞を混入した担体を移植することを計画している。
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Causes of Carryover |
本研究において、研究方法を確立するために論文として掲載することとなった。 そのため、2020年度の予算を論文掲載および学会発表として用いることとするため、追加実験を中止し、物品の購入を中断した。本来であれば、謝金や旅費が発生し、40万円程度の使用となるが、3月までの論文作成が困難であったため、次年度使用額が生じた。 今後は論文作成に使用した英文校正や学会発表に次年度予算を使用する予定である。
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