2020 Fiscal Year Research-status Report
矯正学的歯の移動時に歯根膜で発現するMMP12による血管新生の制御
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19K19304
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
成宮 毅 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (00803074)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マトリックスメタロプロテアーゼ12 / 歯根膜線維芽細胞 / 歯の移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正学的歯の移動時の牽引側歯根膜では、歯根膜繊維の再配列や骨添加などの組織リモデリングが起こっている。組織リモデリングには、新たな栄養供給源としての血管を必要とするために、血管新生が起こると考えられる。血管新生は、① 血管の裏打ち構造である基底膜の破壊 ② 出芽時に認められるtip細胞および stalk細胞などの血管内皮細胞の増殖と遊走 ③ 管腔形成および血管基底膜の再構築 という過程を経て新たな管腔構造をもつ血管が形成される。そのため血管新生には血管の基底膜の主成分であるIV型コラーゲンの分解が必須である。これまでに牽引側歯根膜の網羅的遺伝子解析によりMMP12が高発現し、伸展負荷刺激により歯根膜線維芽細胞がMMP12を発現し、このMMP12がIV型コラーゲンを分解すること、および牽引側歯根膜で血管面積が増加することを報告した。また牽引側歯根膜での出芽を確認し、牽引側歯根膜で血管新生が起こることを明らかにしている。しかし、伸展刺激負荷時の歯根膜線維芽細胞が発現するMMP12の詳細な発現メカニズムは不明である。本研究の目的は、歯の移動時の牽引側歯根膜で発現するMMP12の制御メカニズムを解明することである。 本年度はトランスフェクション法を用いて細胞シグナル分子Erkのリコンビナントタンパク質を歯根膜線維芽細胞に導入し、MMP12の変化をリアルタイムRT-PCR法にて遺伝子レベルで解析を行った。これによりERKの増加がMMP12の発現上昇に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度の研究成果を踏まえ、伸展刺激負荷時に歯根膜線維芽細胞に関与する可能性が高いErkとMMP12の関係を検討することを目標とした。そこで、トランスフェクション法を用いて細胞シグナル分子Erkのリコンビナントタンパク質を歯根膜線維芽細胞に導入しMMP12の変化をリアルタイムRT-PCR法にて解析を行い、ERkがMMP12の上昇に関与するデータを遺伝子レベルで得た。これによりヒト歯根膜線維細胞で伸展刺激負荷時に発現が上昇するMMP12は、Erkを介したシグナル経路が関与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
持続的伸展刺激負荷によるヒト歯根膜線維 芽細胞の細胞内シグナル分子Erkの動態を確認するため、western blotting 法を用いて、Erkリン酸化タンパクの経時的な変化を調べる。またMMP12発現上昇の時期との関連を調べる。 細胞シグナル分子Erkのリコンビナ ントタンパク質を使用し、トランスフェクション法を用いてヒト歯根膜線維芽細胞に導入し、MMP12発現への影響をwestern blotting 法を用いてタンパクレベルで調べる。
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Causes of Carryover |
Erkリコンビナントタンパクの歯根膜線維芽細胞への導入が予定より円滑に進行したため。次年度はErkリコンビナントタンパクの歯根膜線維芽細胞への導入後にwesternblot法にてMMP12の解析を行う予定であり、MMP12抗体やwestern blotting法に用いる薬剤などの購入にあてる。
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