2019 Fiscal Year Research-status Report
硬組織蓄積性放射線傷害の概念に基づいた新たながん放射線治療有害事象の予防戦略
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19K19307
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
百々 美奈 東北大学, 大学病院, 助教 (40800892)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線性顎骨壊死 / 放射線性多発性う蝕 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、放射線が引き起こす硬組織への直接的影響を明らかにし、最終的には放射線療法における歯の放射線防御方法の確立を目指す。今年度は、放射線照射による硬組織への物理化学的な直接的影響により、う蝕感受性が上昇し多発性う蝕が引き起こされるという仮説のもと、その直接的な歯牙への影響を中心に検討した。 放射線照射による歯牙への直接的影響の検討を中心に研究を進めてきたが、得られた結果は過去の文献と反する結果となってしまった。次年度は実験方法の再検討を行い、手順や条件を再度確認しながら再測定を行う予定である。①ビッカース硬さ試験:過去の文献では放射線照射により硬さの低下がみられているが、これまでの実験では差が得られなかったため、引き続き方法など再検討し行う。②歯の分割面のpH:フラットISFET pH電極と細胞内pH測定に使用する蛍光色素を歯牙分割面に塗布しpH濃度分布を測定してきた。実験開始前には濾紙を使用してpH変化を確認できていたが、電極や蛍光色素による方法ではpH変化を観察することができなかったため、方法など再検討し引き続き実験を行う。③象牙質の耐酸性:放射線照射処理した抜去歯の表層に 1.5 M 乳酸Buffer (pH 4.0) を浸み込ませたろ紙をおき、歯から流出したCa2+濃度を測定することで酸抵抗性を調べる。放射線照射により酸抵抗性が低下すると考えられるが、これまでの実験では濃度に差が得られないため、引き続き方法など再検討し実験を行う。 次年度以降は、頭頸部放射線療法における歯牙放射線防御装置のう蝕発生軽減作用について検討する。歯牙防御装置の条件検討を行ったのち、患者の放射線照射時の装置装着群と非装着群を比較し、多発性う蝕の発生頻度を観察する。放射線性多発性う蝕は治療終了後1~2年後に生じるため、期間終了後も引き続き観察を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、放射線照射による歯牙への直接的影響(ビッカース硬さ,pH変化,象牙質耐酸性)の検討を中心に研究を進めてきた。 放射線照射によるpH変化は、先行研究では濾紙を使用してpH変化を確認できていた。今年度にはいり、2次元的なpH変化をみるため、細胞内pH測定に使用する蛍光色素を歯牙分割面に塗布しpH濃度分布を測定してきたが、濾紙でみられたpH変化を確認することができなかった。また、他のpH測定方法として、フラットISFET pH電極も使用したが、放射線照射によるpH変化を観察することはできなかった。来年度以降は、他のpH測定方法なども検討し、今年度行った方法も再検討し引き続き実験を行う予定である。 また、ビッカース硬さや象牙質耐酸性についても、過去の文献の再現ができなかった。過去の文献では放射線照射後に硬度が低下するという報告が多数あったが、これまでの実験では硬度に差が得られなかった。また、象牙質耐酸性の低下も確認できなかった。このため、実験方法や条件を再検討する必要があり、想定されていた計画通りに進まなかった。 また、年度途中から産休・育休に入ったこともあり、研究が中断されているため、復帰後に引き続き実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、放射線照射による歯牙への直接的影響の検討を中心に研究を進めてきたが、過去の文献と反する結果となってしまったので、次年度は実験方法の再検討を行う予定である。①ビッカース硬さ試験:差が得られなかったため、引き続き方法など再検討する。②pH:フラットISFET pH電極と細胞内pH測定に使用する蛍光色素を歯牙分割面に塗布しpH濃度分布を測定してきた。濾紙を使用してpH変化を確認できていたが、これらの方法でpH変化を観察することができなかったため、試薬の条件変更など再検討する。③象牙質の耐酸性:歯から流出したCa2+濃度の変化を測定することで酸抵抗性を調べた。Ca2+ 濃度測定にはカルシウムE-テストワコーを使用したが、これまでの実験では濃度に差が得られないため、引き続き条件など再検討し実験を行う。 【2021年度】放射線照射による骨代謝の解析と歯の防御装置の条件検討を行う。まず、骨代謝について、①放射線照射による変化と②pH上昇による変化を検討する。次に歯の防御装置の条件検討を行う。マウスピースを使用し、歯の部分にフィルム式放射線測定装置を埋め込み、がん放射線照射時に使用する放射線防御用マウスピースの有無における放射線量を測定する。その後、歯に対する放射線を防御するためのマウスピースの材質・構造などを比較検討し、放射線防御効果の高い条件を検討する。 【2022年度】頭頸部放射線療法における歯牙放射線防御装置のう蝕発生軽減作用について検討する。がんの放射線療法患者の放射線照射時のマウスピース装着群と非装着群を比較し、多発性う蝕の発生頻度を観察する。放射線による多発性う蝕は治療終了後1~2年後に生じ、長期間の研究となるので、研究期間終了後も引き続き観察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
年度途中から産休・育休に入り、予定していた実験が進まず、現在は研究が中断されてしまったため、当初使用予定の額よりも下回ってしまった。次年度より研究を再開する予定であるため、復帰後に使用する予定である。
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