2022 Fiscal Year Research-status Report
オゾンナノバブル技術を応用した殺菌性口腔内保湿剤の開発と臨床応用
Project/Area Number |
19K19317
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
片岡 正太 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40808010)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 酸素ナノバブル / 次亜塩素酸ナノバブル / 口腔細菌叢 / 口腔保湿剤 / 口腔洗口剤 / メタゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はナノバブル水を応用して、誤嚥の疑いや有病・多剤服用高齢者に対して使用可能な殺菌性口腔ケア用保湿剤を開発することを目的とする。本研究ではナノバブル水に粘稠性を付加することにより、持続的に口腔内で、殺菌性・保湿性を発揮する口腔ケア用保湿剤の製作をおこない、その有効性の検討をおこなう。酸素ナノバブル水に加え次亜塩素酸ナノバブル水を作成し、唾液細菌叢に対する各ナノバブル水の影響を調べるため、次世代シーケンサー(MiSeq)によるメタ16s解析を行った。協力歯科医院を受診した患者16名をリクルートし、吐唾法による唾液の採取を行った。採取した唾液を、BHI培地に超純水、酸素ナノバブル水および次亜塩素酸ナノバブル水をそれぞれ加えた3つのチューブに分注し、6時間嫌気培養後10,000rpmで10分間遠心後、菌体を回収し、DNA抽出キット MORA-EXTRACT(AMR株式会社)を用いてDNAの抽出を行った。抽出したDNAをメタ16s解析を行った。その結果、1)各ナノバブル水の曝露により、唾液細菌叢のβ多様性に有意な影響は確認されなかった、2) 次亜塩素酸ナノバブル水の曝露によりPorphyromonas属の占有率に有意な減少が確認され、細菌種においてはP. pasteriの占有率が有意に減少することがわかった。本年度はフォローアップ実験としてP. pasteri (JCM30531)に対する次亜塩素酸ナノバブル水暴露の影響を、CFUs (Colony Forming Units)により検討した。P. pasteri を超純水(コントロール)または次亜塩素酸ナノバブル水を添加した BHI 培地で曝露し、最終希釈培地を培養した後にカウントした。その結果、次亜塩素酸ナノバブル群ではコントロール群と比し、有意にCFUsが減少することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先年度の酸素ナノバブル水と次亜塩素酸ナノバブル水を作成し、唾液細菌叢に対する次世代シーケンサーによるメタ16s解析を行い、各ナノバブル水曝露の影響を確認したところ、次亜塩素酸ナノバブル水曝露によるPorphyromonas属の占有率に有意な減少が確認され、細菌種においてはP. pasteriの占有率が有意に減少することがわかった。当結果は、ナノバブル水曝露による細菌叢への影響を検討した先行研究は口腔細菌叢を対象とした研究はもの少ない点、P. pasteriがバイオフィルム形成に関与する口腔内細菌であることが報告されており、特にバイオフィルム形成過程において早期定着菌と後期定着菌の架け橋となる役割を果たすことが報告されている点からも、新規性のある結果と考えられ、論文としてまとめ、投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の結果は新規性のある結果と考えられるため、現在、論文投稿中である。併せて、追実験の必要性が生じた際の準備を行い、論文掲載まで完了させる予定である。
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Causes of Carryover |
協力歯科医院を受診した患者からの唾液サンプルを想定より集めることが出来ず、次世代シーケンサー検査依頼数が予定よりも少なくなってしまったため、次年度使用額が生じた。 また、細菌叢で有意に変化のあった菌種がP. pasteriのみであったため、当初の予定より菌株の購入数が大幅に減少した。現在、論文中であるため論文投稿費やリバイス作業、追実験等への使用を予定している。
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