2019 Fiscal Year Research-status Report
周術期患者における口腔Candida菌が口腔粘膜炎に及ぼす影響についての検討
Project/Area Number |
19K19318
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 俊郎 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (50804952)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔Caidida菌 / 口腔粘膜炎 / 化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、化学療法や放射線療法時に口腔粘膜炎が生じ、原疾患以外の主要なQOL低下要因となっていることが問題視されている。しかし、口腔Caidida菌と化学療法時の口腔粘膜炎との関連はまだ明らかでない。本研究では、化学療法開始前から化学療法期間中の口腔Cadida菌量を追跡し、口腔粘膜炎の発症ならびに重篤度と口腔Candida菌の保菌状態との関連を明らかにすることを目的とした。 対象は岩手医科大学附属病院医科診療科から化学療法開始前の歯科に周術期口腔管理を依頼された患者42名である。歯科診療録から口腔粘膜などの口腔内状態を抽出した。口腔Candida菌の試料採取は化学療法開始前と化学療法開始から3~5目のいづれかの期間で行った。 化学療法開始前後のCandida菌量を比較したところ、化学療法後のCandida菌量が有意ではないが、多い傾向にあった。また、化学療法開始前後の口腔粘膜スコアを比較したところ、化学療法後の粘膜スコアが有意に高かった。化学療法後のCandida菌量と粘膜スコアの相関を分析したところ、有意な関連は認められなかった。これまでの研究でCandida菌を繰り返し測定した場合、一定量以上の菌量で存在しなければ安定して検出されないことが示唆された。そこで、Candida菌量が対数値で1以上の者(15名)を抽出して粘膜スコアとの相関分析を行うと非常に強い関連があることがわかった。 本研究では、化学療法開始前にCandida菌量が対数値で1以上の者で、Candida菌量と化学療法後の口腔粘膜炎の重篤度に高い関連が認められた。すなわち、化学療法開始前から口腔にある程度の菌量が定着している者では、口腔Candida菌量は口腔粘膜炎の発症のみならず、重篤度にも影響を及ぼす可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始以前から、岩手医科大学附属病院では医科と連携し、食道癌患者を対象とした周術期サポートチームを構成している。そこではすべての食道癌化学療法予定患者の術前から術後まで口腔内管理を行っている。岩手医科大学附属病院では本研究を十分に遂行する下地が確立されており、研究開始後も、医科から周術期口腔管理の依頼を受けており、研究対象者数は順調に増えている。岩手医科大学附属病院は2019年9月に病院移転による移動が行われたため、移転前後の期間では医科からの依頼が少なく、研究サンプルの獲得があまり得られなかった。しかし、移転より1、2か月経過した頃には、再び医科からの依頼件数が増え、現在までサンプル数は増加しており、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では引き続き培養法による口腔Candida菌量の継時的測定と口腔粘膜スコア等のその他の情報の採取を継続し、研究サンプル数を増加させる予定である。また昨今新型コロナウィルスの増加により、呼吸器症状と歯科診療行為の関係から、今後医科からの依頼数が再び減少する可能性がある。現在岩手県では新型コロナウィルス検出の報告はないが、今後もし病院内で発生した場合は、研究サンプルが得られなくなる可能性もある。その場合は、その時点で得られたサンプル数で分析を行い、研究データをまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
申請者らは研究開始前より、岩手医科大学附属病院において周術期のリスクスクリーニングとして術前に口腔Candida菌培養検査を行ってきた。そのため口腔Candida菌の培養に使用するクロムアガーカンジダ培地(CHROMager TM Candida)等の消耗品が備蓄されており、予定より研究備品の使用が減ったため、次年度使用額が生じたと考えられる。また、岩手医科大学附属病院の病院移転に伴い、移転前後の周術期口腔管理の依頼が減少したことも理由として挙げられる。 今後の使用計画として、これまでの研究計画を継続しサンプル数を増やすため、検査・培養等に使用する消耗品の購入および、それらのデータを解析する分析用パソコンおよび統計解析ソフトの購入を予定している。
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