2019 Fiscal Year Research-status Report
がん化学療法患者における漢方薬を用いた歯周管理の有用性
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19K19340
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
森山 聡美 徳島文理大学, 保健福祉学部, 助教 (80827270)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 専門的口腔ケア / 食道がん / 化学療法 / 口腔粘膜炎 / 漢方薬 / 歯周病原細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん化学療法により発症する口腔粘膜炎は、不良な口腔衛生状態が重篤化を惹起するが、漢方薬の中でも抗菌・抗炎症作用を持つ大黄が配合された大黄甘草湯は、歯周病原細菌生育を減弱させる作用が報告され、歯肉の炎症軽減だけでなく口腔粘膜炎の増悪の軽減に繋がる炎症性サイトカイン産生抑制作用などが期待されている。以上のような背景から、本研究課題では専門的口腔ケア介入の効果に加え、食道がん患者の口腔内細菌叢を明らかにするとともに、歯周管理における大黄甘草湯の有用性を検証し、専門的口腔ケアと併用可能な漢方薬臨床応用のための基礎データとすることを目的とした。 まず、初回化学療法(DFP療法)期間中の口腔内状態が確認できた26名(口腔ケア介入群:9名,コントロール群:16名)を対象に,専門的口腔ケア介入の効果を調査した結果,専門的口腔ケア介入群はコントロール群と比較して重症口腔粘膜炎の発症率が有意に低く,重症口腔粘膜炎は化学療法開始後2週目以降に出現する割合が高いことも確認された。さらに,対象者26名のうち,重症口腔粘膜炎を発症した群は非発症群と比較して,DFP療法の中断に至った割合が有意に高かった。以上から食道がん化学療法患者に対するがん支持療法としての専門的口腔ケアの有用性が示された。 また、徳島大学病院歯科部門の患者の舌苔を採取し、リアルタイムPCRの手法にて総菌数および3種の歯周病原細菌数について調べた。その結果、歯科外来患者では口腔内総細菌数に占める割合はF. nucleatum,C. rectus,P. gingivalisの順に高い傾向にあることが判明した。現在、マッチングを行った歯科外来患者の口腔内細菌数と、すでに得られた食道がん患者からの分析データを比較検討中であり、食道がん患者群特有の口腔内細菌叢および歯周病リスクについて検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食道がん化学療法患者における口腔衛生状態の改善および重症口腔粘膜炎予防に対する専門的口腔ケアの効果について、これまで得られたデータをまとめ日本語論文を作成して、口腔衛生学会雑誌へ報告した。更に、国際学会においても本研究課題に関連した内容について研究成果を発表することができた。 臨床研究では実施計画に示したように、徳島大学病院歯科部門の患者の口腔内細菌叢の分析を実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究では患者の口腔診査ならびに口腔内細菌叢の分析を継続し、食道がん患者からの分析データと比較することにより、同患者群の口腔内細菌叢および歯周病リスクを検証する。 基礎研究では、歯周病原細菌を用いた、大黄甘草湯によるバイオフィルム形成抑制作用、および現在進めている炎症性サイトカイン産生抑制実験を継続する。得られた成果を検証し、歯周管理に大黄甘草湯が有用である基礎データとなるか、検証する。
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Causes of Carryover |
基礎研究に用いる試薬を購入する予定であったが、実施を計画していた基礎研究が実行に至らず実施計画段階であり、次年度に実施することとなったため。
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