2020 Fiscal Year Research-status Report
がん化学療法患者における漢方薬を用いた歯周管理の有用性
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19K19340
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
森山 聡美 徳島文理大学, 保健福祉学部, 助教 (80827270)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食道がん / 化学療法 / 口腔粘膜炎 / 漢方薬 / 口腔細菌叢 / 歯周病原細菌 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
がん化学療法の有害事象として発症する口腔粘膜炎は、不良な口腔衛生状態が重篤化を惹起する。漢方薬の中でも抗菌・抗炎症作用を持つ大黄が配合された大黄甘草湯および半夏瀉心湯は、歯周病原細菌生育の減弱に加えて、歯肉の炎症・口腔粘膜炎の増悪の軽減に繋がる炎症性サイトカイン産生抑制作用などが期待されている。 食道がん患者特有の口腔細菌叢について調べるため、徳島大学病院歯科部門を受診した患者103名および食道がん患者群23名対象とし、年齢・性別・喫煙・ブリンクマン指数・舌苔スコアのマッチングにより、それぞれの群から対象者を抽出した。統計解析では、ペアマッチごとの群間比較をウィルコクソン検定にて実施した。マッチングの結果、両群からそれぞれ8名の対象者が抽出された。口腔細菌叢について、食道がん患者群ではコントロール群と比較してC. rectusが有意に高い比率で検出された。 一方、抗癌剤5-FUは、副作用として口腔粘膜の細胞死や炎症性サイトカイン産生から、口腔粘膜炎の発症・増悪を引き起こす。基礎研究として、5-FUにより誘導される歯肉由来細胞からの炎症性サイトカイン産生を大黄甘草湯(TJ-84)および半夏瀉心湯(TJ-14)の漢方薬成分が抑制するか検証した。歯肉由来細胞(Sa3細胞)に、5-FU (5 mg/mL)および、TJ-84またはTJ-14(0.5 mg/mL)を添加し、5-FU誘導TNF-α mRNAの発現への影響を調べた。その結果、用いた2種の漢方薬添加群では、非添加群と比較してTNF-α mRNAの発現を有意に低下させた。それ故、用いた漢方薬は炎症性サイトカインが関与する口腔粘膜炎発症・増悪を抑制する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食道がん化学療法患者における特有の口腔細菌叢について、知見を得ることができた。また、用いた2種の漢方薬添加群では、炎症性サイトカインの遺伝子発現を有意に低下させる知見も得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究では、さらに対象患者の分析を継続してマッチング対象者を増やし、食道がん患者からの分析データと比較して同患者群の口腔内細菌叢および歯周病リスクを検証する。 基礎研究では、漢方薬による歯周病原細菌を用いたバイオフィルム形成抑制作用の実験を実施し、歯周管理に漢方薬が有用である基礎データとなるか、検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、予定していた研究成果の海外学術大会での発表を見合わせたため、旅費等において未使用経費が生じ、次年度使用額が発生した。 令和3年度は、臨床研究においてさらに対象者を増やして分析を遂行する予定であり、次年度使用額はこの経費に充当する予定である。
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