難病法改正による炎症性腸疾患治療法選択の変化と医療費構造の解明

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K19367
• Research Institution: Niigata University
• Principal Investigator: 齋藤 翔太 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60739465)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 炎症性腸疾患 / リアルワールドデータ / 難病法 / 生物学的製剤 / データベース解析

Outline of Annual Research Achievements

本年度は研究課題に関連する文献レビュー、レセプトデータベース構築を実施した。
文献レビューは炎症性疾患に関する治療、医療制度について情報収集を行った。診療ガイドラインをはじめとし、炎症性腸疾患に関する代表的な疫学研究に関する文献収集を行い、現在保険適用されている炎症性腸疾患の治療薬とその臨床成績を整理した。難病法改正後炎症性腸疾患に対する生物学的製剤治療の選択肢が増えてきており、難病法改正前との生物学的製剤の使用実態の比較において近年保険適用となった生物学的製剤の取り扱いについて解析方法を工夫することが必要と考えられた。
また、データベースの抽出仕様が確定し、解析用環境へのデータベース構築を実施した。データベースにはPostgreSQLを採用し、データベースへのレセプトローデータの取り込みを実施した。レセプトデータは病名テーブル、診療行為テーブル、医薬品テーブルなどに分割し、解析が効率的に実施できるように正規化を行った。炎症性疾患治療に精通する専門医のアドバイスのもと、患者組み込み条件には内視鏡検査、生検、病理診断に関する診療行為を対象とした。これらは炎症性疾患の確定診断に必須となる診療行為であり、病名情報と合わせて診断年月を決定する情報となる。
文献レビューから得た治療に関する情報から解析に必要な医薬品コード、診療報酬コードの定義を行い炎症性腸疾患患者レセプトデータベースの解析準備を整えることができた。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

所属機関の変更に伴う本務の業務整理に必要な時間が多く発生したため研究課題遂行に必要なエフォートがさけず、想定されていた工程に遅延が発生しデータ解析と論文投稿のフェーズについて１年延期を余儀なくされた。

Strategy for Future Research Activity

構築が完了したレセプトデータベースから定義した解析プロトコルに沿ってtime-to-eventデータへの加工を行う。抽出したヒストリカルデータをもとに難病法改正前後のそれぞれの群の患者背景が揃うように傾向スコアマッチングを実施する。患者背景が調整されたデータから生物学的製剤治療の開始をエンドポイントとした生存時間解析を行い、研究課題の主目的を達成する。また、医療費構成に着目した記述統計に関する集計を行う。時系列に炎症性腸疾患治療に必要な医療費の構成内容がどのように変化しているか明らかにする。データベースの規模が研究計画当初より大きくなり、データ抽出のパフォーマンスへの影響が懸念される。著しくデータベースのスループットが劣る場合はハードウェアの増強を行いデータベース抽出環境のチューニングを実施する。レセプトデータの統計解析結果は速やかに論文化し、海外学術雑誌へ投稿し、研究期間内の掲載を目指す。

Causes of Carryover

研究計画の遅延に伴い、データ解析に必要なソフトウェアとハードウェアに関連する経費、研究成果発表に関する学会参加旅費と論文投稿費の予算執行がされなかった。
繰越額は遅延になったデータ解析作業に必要な経費と研究成果発表に必要な論文校正費として使用する。