2022 Fiscal Year Annual Research Report
難病法改正による炎症性腸疾患治療法選択の変化と医療費構造の解明
Project/Area Number |
19K19367
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
齋藤 翔太 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60739465)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / リアルワールドデータ / 難病法 / 生物学的製剤 / データベース解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患は若年者に好発する慢性の難治性疾患であり、症状に応じた適切な治療選択が必要である。2015年に難病法が改正され、軽症者の一部が医療費の助成対象から外れることとなった。助成の対象外となった患者は自己負担が増すため、寛解維持療法の自己中断などの治療選択の幅を狭めてしまうことが危惧されている。近年では、臨床効果が高い反面、高額な分子標的薬が複数保険収載され、その導入症例が増加の一途を辿っている。本研究では、大規模レセプトデータベースを活用した時系列的なビッグデータ解析から炎症性腸疾患に対する生物学的製剤の使用実態の変化を明らかにした。 本研究ではJMDCデータベースを用いた。組み込み基準は炎症性腸疾患のうちクローン病に絞り、ICD-10の病名情報、内視鏡検査の実施情報、投薬情報からベースラインの診断年月日を定義した。追跡期間はベースラインから2年間とした。生物学的製剤はインフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブを対象とした。 組み込み基準に該当した807人の患者に対して診断日を2014年以前、2015-2017年、2018年以降の3群で層別化した。イベントを診断から2年以内の生物学的製剤治療開始と定義し、性別、年齢(30歳未満、30歳以上)、診断年を共変量としたコックス比例ハザードモデルを用いた生存解析の結果、ハザード比に統計的有意差のあった因子は、女性と2018年以降の診断の2つであった。 本研究結果から難病法の改正がクローン病に対する生物学的製剤の導入を抑制する影響はないと考えられた。また、若年者の女性が診断後早期に生物学的製剤による治療を開始する傾向が見られた。本研究成果は診療ガイドラインや難病政策の見直しに資する医療経済的エビデンスとなることが大きく期待される。
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