2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K19382
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 令奈 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (30822704)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 進行乳がん / 化学療法 / 意思決定プロセス / 医師患者関係 / 医学的無益性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、進行性乳がん患者の化学療法に関わる腫瘍内科医へインタビュー調査を行った。計6名の進行乳がん治療に主に携わる腫瘍内科医へオンラインによるインタビュー調査を実施した。内容分析により結果をまとめたところ、先行する乳腺専門医に対する調査と比べ、医師の信念の違い(医師のほとんどは患者は死を受け入れることもできると考えていた)、緩和医療の紹介のタイミング(おおむね診断初期から紹介していた)や患者とのコミュニケーションの違いが明らかとなった。特に、今回の調査においては、腫瘍内科医ががんを持った患者としてだけではなく、患者の人生全体において大切にしていることを共有し、そこに焦点をあてた話し合いをしていることが特徴的だった。その結果を踏まえ、2019年度に出版した乳腺外科医と腫瘍内科医に対する調査の結果と統合して調査項目を作成し、質的調査で得られた医師の信念や価値観にかかわる因子と、各医師の患者への情報提供のタイミングや治療を終了するタイミングの関連を検討するための調査票を作成した。また、腫瘍内科医に対する終末期の話し合いに影響を与える因子についての調査(Mori 2015)の結果と比較することができるように、調査票の各項目を調整した。今年度の基金は主に、インタビューデータ書き起こし依頼費用、インタビュー調査謝金、上記研究のための文献購入費に当てられた。 昨年度より医学的無益性についての質問も加えることによってより現象の理解が深まるのではないかという示唆を得ており、引き続き医学的無益性についての先行研究、文献調査、Wrong Medicine第2版(Nancy S Jecker et al)の翻訳を行っていたが、2021年5月に日本語版が刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
おおむねインタビュー調査の進行に時間を要してしまったことが進捗に影響した。第一にコロナウイルスの影響で、腫瘍内科医へのインタビュー調査が当初の予定から延期となった。またインタビュー調査を対面で行うことが困難となり、オンラインインタビューを行うために、研究方法の変更を行ったため、研究倫理審査委員会へ調査方法変更の申請を行ったことから、その手続きに時間を要した。加えて、ちょうどインタビュー調査を開始した時期が、コロナウイルスによる通常診療の縮小と重なってしまい、がん患者に対する抗がん剤治療も急を要さない場合は延期するという対応を各病院の判断でおこなっていたことから、状況が落ち着くまでインタビューを延期せざるを得なかった。インタビュー内容については、分析の際に、コロナウイルスによる意思決定プロセスへの影響なのか、医師自身の信念などからくるコミュニケーションの違いなのか、同僚とのディスカッションを何度か繰り返しながら、分析を行った。そのため、結果のまとめに時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度後半で行ったインタビューにより、乳がん治療に関しては、各病院ともおおむね通常の運営に落ち着いてきており、医師のコミュニケーションがコロナウイルスの影響を受けにくくなってきていること、また患者も対応をしながら治療を継続していることが明らかになってきたことから、当初の予定からは大幅に遅延してしまったが、2021年4月に調査票を郵送する予定である。結果は5月末までに収集し、7月までには分析を終え、これまでに実施した質的調査の結果と統合したうえで、2021年11月に行われるアジア太平洋緩和ケア学会総会(国際研究学会)にて研究結果を発表する予定である。(2021年4月に抄録を提出済み)また、学会発表後に海外Journalへの投稿を予定している。 患者、遺族へのインタビュー調査は、現在2名より参加の同意を得ているが、量的調査の結果が出てから、可及的すみやかにインタビューを開始する予定である。しかし、うち1名は乳がんの状態が進行したことから、現状でのインタビューは侵襲が高い可能性があり、新たな候補を検討している状態である。再度、インタビュー調査に協力してくれた医師へ依頼し、調査に協力できる全身状態の患者を紹介いただき、さらに数名にインタビュー調査への協力を依頼し、年度後半には調査を実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
腫瘍内科医へのインタビュー調査の遅れにより、乳腺専門医対象の調査票による量的調査の実施が遅延した。そのため、同調査に対する調査票郵送、回収、分析にかかる費用は2021年度に執行予定である。また、量的調査、質的調査の結果がそろった段階で、両調査の結果を統合し、2021年11月の国際研究学会への発表ならびに、海外Journalへの投稿を予定しているため、学会参加費、英文校正、出版費用についても、2021年度執行予定である。
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