2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K19382
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 令奈 (大関令奈) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (30822704)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 乳癌 / 患者医師関係 / 治療意思決定 / 医学的無益性 |
Outline of Annual Research Achievements |
具体的内容:2021年8月より海外留学のため、研究を一時中断したが、2022年8月より再開した。主に、量的調査結果における因子分析、ロジスティック回帰分析を用いた、質的調査の検証を行った。また、自由回答部分に関して、内容分析を行い、より多くの乳腺外科医、腫瘍内科医が考える進行乳がん患者に対する抗がん剤治療や終末期医療に対する意見について重要な要素を抽出した。 因子分析の結果は、概ね質的研究を支持する結果であり、「患者は死を受け入れられない存在である」という信念を持つ医師群は、質的研究で得られた特徴をもつ質問に対して肯定的に答える傾向が見られた。一方、ロジスティック回帰分析を行ったところ、「長い患者医師関係の中で病気や死を意識しないで過ごすことが患者にとって良いことである」「死はタブーであり死の話し合いは辛い」「終末期の話し合いは難しい」という因子が大きい、あるいは「終末期の話し合いについてのポジティブな経験がある」「終末期についての話し合いは患者の信頼につながる重要なことである」という因子が低いほど、「患者は死を受け入れられない存在である」という信念を持つグループの特徴を示す回答を選択するドクターである可能性が高いことが示唆された。内容分析の結果は、「トリプルネガティブ乳がんの個別性の高さ」「乳がん医療サービスの不足」「話し合いの難しさ」という3つの要素が抽出された。自由記載欄にも個別の意見を述べる医師が多く見られ、医師たちのこのような診療における困難が伺われた。彼らに倫理的なサポートを行う必要があることが示唆された。研究再開から終了までは8ヶ月と短かったことから、この期間での論文出版や学会発表には至らなかったが、報告時点で2023年10月に行われるWorld Congress of Bioethicsにて、本研究のポスター発表が決定している。
|