2019 Fiscal Year Research-status Report
環境化学物質による「ストレス応答系のかく乱」を検出する新規リスク評価法の開発
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19K19406
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
平野 哲史 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (70804590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ストレス応答系 / ネオニコチノイド / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年急増しているうつ病や不安障害等のストレス関連精神疾患の原因として,遺伝要因のみならず化学物質等の環境要因が指摘され,発症に関わるメカニズムとして「ストレス応答系のかく乱」が注目されている.本研究では,ネオニコチノイド系農薬曝露マウスおよび培養神経細胞をモデルとし,近代特有の環境要因である環境化学物質が引き起こす「ストレス応答系のかく乱」に関するメカニズムを解明すること,加えて「ストレス応答系のかく乱」を検出可能な新規バイオマーカーおよびリスク評価法を開発することを目的とした。 2019年度においては、マウスモデルを用いた解析により、幼若マウスにおいて慢性予測不能ストレスに加え、ネオニコチノイド系農薬の一種ジノテフランを曝露すると、ストレスによる神経行動学的影響の一部が打ち消される一方で、ストレスホルモンとされる血中グルココルチコイド濃度は相加的に上昇することを明らかにした。また、妊娠マウスに投与したネオニコチノイド系農薬の一種クロチアニジンは、速やかに胎子に移行し母獣と同等の濃度で検出されることを明らかにした。 また、細胞モデルを用いた解析では、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yにおいてクロチアニジンを曝露すると、細胞数の増加や神経突起の過剰な伸長がみられるとともに、影響メカニズムとして細胞内カルシウム濃度の一過性上昇やERKのリン酸化、遺伝子発現プロファイルのかく乱が関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に計画していた通り、マウスモデルおよび細胞モデルを用いた解析から、環境化学物質が引き起こす「ストレス応答系のかく乱」に関するメカニズムの一端が明らかになっている。また、マウスモデルを用いた実験から、ネオニコチノイド系農薬が及ぼす神経行動学的影響についてはストレス状態が感受性因子となるという予想していなかった知見を得ている。さらに、細胞モデルを用いた実験から、ネオニコチノイド系農薬曝露時に標的となる細胞種や受容体を一部明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降は、上記のモデルに加え、次世代曝露マウスモデルやヒト不死化中脳神経前駆細胞細胞モデルを導入し、脳の発達期にフォーカスした詳細な影響メカニズムの解明に取り組む。さらに、表現型変化の見られたモデルに対してはトランスクリプトーム解析を主体としたトランスオミクス解析を適用することで、バイオマーカー候補となる因子の抽出を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度には、当初予想していなかった知見を得たため、使用計画を一部変更し、メカニズム解明に注力した。未使用分については、2020年度において新規マウスモデルおよび神経細胞モデルの作製に加え、トランスクリプトーム解析に使用する予定である。
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