2021 Fiscal Year Research-status Report
環境化学物質による「ストレス応答系のかく乱」を検出する新規リスク評価法の開発
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19K19406
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
平野 哲史 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (70804590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネオニコチノイド / 神経毒性 / 環境化学物質 / ストレス応答 / バイオマーカー / 農薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年急増しているうつ病や不安障害等のストレス関連精神疾患の原因として,遺伝要因のみならず化学物質等の環境要因が指摘され,発症に関わるメカニズムとして「ストレス応答系のかく乱」が注目されている.本研究では,農薬曝露マウスおよび培養神経細胞をモデルとし,近代特有の環境要因である環境化学物質が引き起こす「ストレス応答系のかく乱」に関するメカニズムを解明すること,加えて「ストレス応答系のかく乱」を検出可能な新規バイオマーカーおよびリスク評価法を開発することを目的とした。 2021年度においては、二光子顕微鏡によるin vivoイメージングを活用することでネオニコチノイド系農薬が引き起こす高次脳機能のかく乱メカニズムの一端を明らかにした。無毒性量(NOAEL)以下のクロチアニジンを2週間曝露したマウスにおいては、大脳皮質における神経活動の活性化が認められ、トランスクリプトーム解析の結果から、神経炎症やシナプス伝達に関する遺伝子発現の変動がみられた。一方、無毒性量以下のアセタミプリドを単回曝露したマウスにおいては不安様行動の亢進と同時に、大脳皮質における発火頻度の増加等がみられた。また、培養神経細胞モデルを用いた実験により、ピレスロイド系農薬デルタメトリンが引き起こす神経細胞死において、マイトファジーの活性化およびプロテアソーム活性低下によるタンパク質分解系の不均衡状態を介した毒性メカニズムを初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、環境化学物質が引き起こす「ストレス応答系のかく乱」に関する影響メカニズムおいて、特定の脳領域における神経活動性の変化を新たに明らかにすることができた。また、培養細胞モデルにおいて明らかにした毒性メカニズムの一部を新たなエンドポイントとして活用することで新規リスク評価法に応用できる可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は、マウスおよび培養神経細胞モデルから得られたオミクスデータを統合し、バイオマーカーとなる因子の機能解析を行う。また、対象とする化学物質を拡大し、神経毒性に関するエンドポイントを指標とした新規リスク評価法の実証に取り組む。
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Causes of Carryover |
コロナ禍における研究中断により計画を変更したため、一部のオミクス解析を次年度以降に行う。
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