2020 Fiscal Year Research-status Report
Effects of pesticide exposure on central synapse formation
Project/Area Number |
19K19407
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和泉 宏謙 富山大学, 医学部, 技術専門職員 (00377342)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 農薬曝露 / 神経シナプス形成 / 神経毒性 / 有機リン系農薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
農薬曝露による神経系への影響として、高次脳機能障害を伴う発達障害が問題視されている。しかし、その症状の隠蔽性は高く、中枢神経系の発達に与える影響と分子メカニズムについては未だ不明である。本研究計画では、農薬曝露による神経シナプス形成への影響評価を通して、神経発達障害の病態発症機構の解明に結びつけることを目的として、令和2年度は以下の内容の研究を実施した。
(1)グルホシネート曝露による各シナプス種への影響 前年度において、母体を介して胎生期にグルホシネート曝露を施したマウス胎児からの培養神経細胞でNLGN1に対するシナプス前終末の誘導量に有意な減少を見出した。この結果を踏まえ、令和2年度はシナプス後部に存在する細胞接着分子IL1RAPL1に対するシナプス前終末の分化誘導能の測定・定量を実施した。その結果、グルホシネート曝露によって生じるIL1RAPL1に対するシナプス前終末の誘導変化は、NLGN1で見受けられた減少とは異なることが分かった。 (2)発達障害モデルマウスの作製 前年度に作製したPTPRD遺伝子変異導入マウスについて、PTPRD遺伝子の発現量(転写産物ならびにタンパク質)を調べたところ、PTPRD遺伝子ヘテロノックアウトマウスと同定度に減少していたため、今回の研究計画で目指している発達障害モデルにはならないことが分かった。また、個体レベルでの農薬曝露の影響評価を簡便化するために、脳内にてPTPRD遺伝子をモニターするマウスを作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、農薬曝露によって形成されるシナプスの種類や割合の変化の評価、ならびに発達障害モデルマウスの作製・解析を実施予定としていた。グルホシネート曝露によってIL1RAPL1に対するシナプス前終末の誘導量に変化が生じること、またその変化はNLGN1に対するものとは異なることを明らかにした。この結果を受け、グルホシネート曝露後の産仔脳で各シナプス種についての影響評価を行うために、胎児脳内で神経細胞を蛍光標識する子宮内エレクトロポレーション法の導入を進めたが、その条件検討に時間を要し、産仔脳の解析までには至らなかった。また、前年度において作製したPTPRD遺伝子変異導入マウスは今回の研究計画で目指している発達障害モデルとして使えないことが分かったため、新たな遺伝子変異導入マウスの作製を進めている。一方、研究開始時において時間を要すると考えていたPTPRD遺伝子をモニターするマウスを想定よりも早く作製できた。 以上から、現在までの研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は下記の実験を推進する予定である。 (1)農薬曝露による産仔脳での影響評価 グルホシネート曝露を施した培養神経細胞で変化を示したシナプス種について、産仔脳でそのシナプス種に変化が認められるか否かを検証する。これと並行して、初年度に実施した経時的な遺伝子発現解析で発現変動を示した遺伝子群を用いて、グルホシネート曝露によるシナプス病態発症における鍵分子の探索を行う。また、ピレスロイド系農薬であるデルタメトリンについてもシナプス誘導能への影響評価を予定している。 (2)発達障害モデルマウスの作製と解析 今回の研究計画に合致する新たなPTPRD遺伝子変異導入マウスの作製・解析とPTPRD遺伝子をモニターするマウスの解析を予定している。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルス感染対策のため、予定していた学会・研究会への参加を差し控えたことから次年度使用額が生じた。また、研究遂行のために利用している学内共同利用施設の利用料金について、その一部(2020年12月から2021年3月までの4カ月分)の請求が2021年度4月になるため次年度使用とした。
|