2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K19408
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
橋本 和宜 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (10816242)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ホウ素 / 発癌 / 井戸水 / 飲用水 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】地球上の水は、そのほとんどが海水であり、人が利用可能な地下水や河川などの淡水は全体の約0.8%である。人類の生存と健康な生活のためには、ヒトの健康を害さない「安全な水」が必要不可欠であるが、UNICEFとWHOによる「水と衛生のための共同監視プログラム」(2015年)によると、世界人口70億人のうち約6億人が安全な飲料水を得られない状況である。そこで、「安全な水」の確保のため、元素による毒性を正確に把握し汚染状況に適した浄化が必要である。 【目的】本研究において、元素汚染の現状調査のため開発途上国の飲用井戸水の元素網羅的解析を行った。先行研究において、ホウ素についてWHOの飲料水ガイドライン値:2.4mg/Lを超える高濃度汚染を確認している。米国環境保護庁(EPA)及び欧州消費者安全科学委員会(SCCS)によるとホウ素の発癌性に関する影響は十分に明らかではない。また、ホウ素に関して植物への生物学的作用は多く報告があるが、哺乳動物については十分に明らかではない。そのため、ホウ素について、慢性影響である発癌性の解明を目指した。 【研究成果】飲用井戸水227検体について元素濃度測定を行なった。ホウ素濃度について、最大値のみならず平均値もWHOガイドライン値より高値であった。さらに、非癌細胞株および癌細胞株を用いて、ホウ素による形質転換能試験を行った。ホウ素刺激により非癌細胞株の足場非依存性増殖能が促進したのに対して、癌細胞株の足場非依存性増殖への影響は限定的であった。以上のように、本研究では、ホウ素が発癌のイニシエーションに影響する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初の予定通り、ホウ素による悪性形質転換促進能について細胞を用いて解明した。また、動物(マウス)における発癌促進能に関して、発癌モデルマウスの準備を進めている。ゆえに、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、当初の予定通り、ホウ素によるに関する検討を開始する。さらに、ホウ素の高効率な浄化材の検討を開始する。 2020年度も引き続き、下記に示すような、1)ホウ素の発癌性評価、2)飲用井戸水の網羅的元素濃度分析、3)浄化法の開発、に関する研究を進める。 1)ホウ素の発癌性評価:ホウ素による悪性形質転換促進について、複数の細胞株を用いることで再現性を検討する。また悪性形質転換促進機構の分子メカニズムについて検討する。動物実験では、紫外線誘導による発癌モデルマウスの作成に引き続き取り組む。 2)飲用井戸水の網羅的元素濃度分析および浄化法の検討:アジア地域ので採取された飲用井戸水の元素濃度を液体クロマトグラフィー誘導結合プラズマ質量分析法(LC-ICP-MS)にて測定する。 3)浄化材の開発:層状複水酸化物の合成を開始し、構成元素、合成温度や焼成温度について検討を行う。
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Research Products
(7 results)