2019 Fiscal Year Research-status Report
中部アフリカにおける野生動物保有病原体の次世代シークエンサーを用いた網羅的解析
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19K19411
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
阿部 遥 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (90554353)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ブッシュミート / ウイルス / アフリカ / 病原体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では中部アフリカに生息する野生動物のブッシュミート検体を用いて、ブッシュミート中に存在する病原体を次世代シークエンサー解析により網羅的に解析し、ブッシュミートを介した病原体の感染リスクを明らかにすることを目的としている。2019年度は中部アフリカのガボン共和国の現地研究者と協力しブッシュミート検体を採取した。ガボンで一般的に販売されているブッシュミート用の野生動物は、ヤマアラシ、ブルーダイカー、キノボリジャコウネコ等であり、本期間中に合計47体のブッシュミートを入手した。ブッシュミートから糞便検体を採取し、次世代シークエンサーによるメタゲノム解析を行ったところ、動物からヒトへ感染する人獣共通病原性ウイルスが複数同定された。同定されたウイルスには中部アフリカでは報告のないウイルスも含まれており、ブッシュミートを介した人獣共通感染症への感染リスクの一端を明らかにすることができた。今後の詳細な塩基配列解析および検体採取位置情報の解析により、ウイルスの遺伝学的性質やウイルス分布地域を明らかにすることで、人獣共通感染症リスクに関する情報を現地に提供できるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況はおおむね順調である。本研究の研究期間は2年間であり、2019年度はブッシュミート検体採取が主な計画であった。ブッシュミートの希少性および他の業務への時間配分を考慮して、当初の計画では30~40体のブッシュミートを入手することを目標としていた。本研究においてはブッシュミートの入手しやすい時期を現地研究協力者が提案してくれるとともに、彼らの積極的な交渉により予定より多くのブッシュミート検体を早い時期に入手することができた。その結果、当初計画では2020年度に予定していた次世代シークエンサー解析を2019年度に前倒しして行うことができた。次世代シークエンサー解析では複数の人獣共通感染症ウイルスを同定することができており、より多くの標的ウイルスに対して詳細なウイルスゲノム解析を行うことが可能となり、ブッシュミートを介した病原体感染リスクを幅広く明らかにすることが可能となった。 以上から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に当初の計画より早く次世代シークエンサー解析へ進めたことから、2020年度は同定されたウイルスのゲノム塩基配列を詳細に解析し、ウイルスの遺伝学的情報および系統学的情報を明らかにし、ブッシュミートを介した人獣共通病原体の感染リスクやウイルスの伝播経路を推定し、現地の研究機関・医療機関に情報提供することを目標としている。まず、次世代シークエンサー解析の結果から入手できたウイルスゲノム情報をもとにPCRによるウイルスの全長ゲノムを解析する。さらに他の地域で同定された同種のウイルスとアミノ酸配列を比較し、病原性または感染性に重要なアミノ酸における変異の有無を確認する。また、全長ゲノム配列を用いた系統樹解析を行うことで近縁種やウイルスの伝播経路を推定する。ブッシュミート検体の入手場所情報を記録しているので、ガボンにおけるウイルス種の分布地図を作成し、地域ごとのウイルス感染リスクを明らかにする。2019年度の進捗が順調であったことから、2020年度の研究は時間に余裕をもって遂行することができる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により野生動物抗ウイルス抗体検出キットの納期が未定となったため次年度購入することとした。
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Research Products
(4 results)