2019 Fiscal Year Research-status Report
ルシフェラーゼ発現トランスジェニックマウスを用いた新規皮膚感作性試験法の構築
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19K19413
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
井戸 章子 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (00336629)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 皮膚感作性試験 / Local Lymph Node Assay / OECDテストガイドライン / 動物愛護 / リンパ球 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、動物愛護の観点から動物実験の適切な施行の国際原則である3R(Replacement・Reduction・Refinement)の推進が強く求められているが、動物を用いない代替法のみで化学物質等の安全性を評価するには問題点が多く、Replacement を除く2Rを強く反映したin vivo試験法の開発が必要である。OECDテストガイドラインに掲載されているLLNAは、化学物質等の皮膚感作性のリスクをマウスで予測できる優れた方法である。従前の試験法よりも実験動物へのストレスは少ないが、最終的に動物を屠殺しなければならず、動物愛護の面でまだ改善すべき問題が多い。本研究では、我々が独自に作成したリンパ球においてルシフェラーゼを高発現しているトランスジェニック(Luc-TG)マウスとin vivoイメージング技術を用いた試験法を新たに確立し、この難題解決を目指す。 2019年度はLuc-Tgマウスのリンパ球の基礎的データの集積を行った。Luc-TGマウスから摘出した脾臓およびリンパ節細胞において細胞数依存的な発光量の増加が得られ、とくにリンパ節のT細胞で発光が高いことが示された。さらにLLNAとの比較検討の前段階として、各マイトジェンでB細胞およびT細胞に対して増殖刺激を与え、その増殖と発光との相関を3H-TdR 取り込み増殖試験の結果を指標に比較したところ、リンパ球細胞の増殖に依存して発光量も増加しており、リンパ球における3H-TdR 取り込み増殖試験の結果と発光量との相関性が確認できた。またその発光量はB細胞刺激に比べてT細胞刺激で高かったことから、T細胞においてルシフェラーゼの発現が高いと考えられた。これらの結果から、Luc-Tgマウスを用いたルシフェラーゼによる酵素基質反応により、LLNAのエンドポイントであるリンパ球(T細胞)の増殖を評価できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度はLuc-Tgマウスのリンパ球の基礎的データの集積を目的に検討し、おおむね完了した。Luc-Tgマウスから脾臓およびリンパ節を摘出し、リンパ球細胞にルシフェリンを添加することで発光量を測定したところ、細胞数依存的な発光量の増加が得られ、その発光は脾臓由来リンパ球よりもリンパ節由来のもので高かった。また、MACSを用いて各リンパ球細胞からT細胞(CD3陽性細胞)とB細胞(B220陽性細胞)を単離し、それぞれの発光量を測定したところ、リンパ節においてB細胞に比べてT細胞 で発光が高いことが示された。なおFlow cytometryによるポピュレーション解析により、どちらも95%以上の単離が確認できている。 次にLLNAとの比較検討に先立ち、LLNAのエンドポイントであるリンパ球の増殖をルシフェラーゼを指標に検出できるかを検討した。 Luc-Tgマウスから摘出したリンパ節細胞に、B細胞の増殖を誘導するLipopolysaccharide (LPS)またはT細胞の増殖を亢進するConcanavalin A (ConA)を添加し、48時間後の細胞増殖および発光量を測定した。細胞増殖はLLNAと同様3H-TdR 取り込み増殖試験により評価した。結果、どちらの刺激でもリンパ球の細胞増殖に比例した発光量の増加が確認でき、リンパ球における3H-TdR 取り込み増殖試験の結果と発光量との相関性が確認できた。さらにConAで刺激した際の単位細胞当たりの発光量が強かったことから、T細胞においてルシフェラーゼの発現が高いと考えられた。以上より、Luc-Tgマウスを用いたルシフェラーゼによる酵素基質反応により、LLNAのエンドポイントであるリンパ球の増殖が評価できる可能性が示唆された。 現在、既知の陽性感作性物質を用いたLuc-TgマウスのLLNAにおける応答性の確認実験の準備段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の検討では、Luc-Tgマウスを用いたルシフェラーゼによる酵素基質反応により、リンパ球、とくにT細胞の増殖が評価できる可能性が示唆された。よって2020年度は、皮膚感作性物質評価におけるLLNA法と発光検出法との比較検討を実施する。 まず、既知の陽性感作性物質を用いて、Luc-TgマウスのLLNAにおける応答性の確認を行う。次にLLNAと同様の条件においてリンパ球細胞自体の発光を検出した場合の結果と前述のLLNAとの結果を比較検討することで、エンドポイントとしての発光検出の妥当性について検証を行う予定である。実験は基本的にLLNAに準じて行う。各濃度の被験物質を耳介に1日1回3日間連続(Day0~2)で塗布する。最終塗布から3日後(Day5)に3H-TdRを静脈内投与して5時間後に屠殺、その後耳介リンパ節細胞を全量回収し、液体シンチレーションカウンターにより3H-TdRの取り込み量を測定する。発光により評価する場合も、LLNAと同様にDay0~2に被験物質を耳介へ塗布し、Day5に屠殺して、耳介リンパ節細胞を全量回収する。その後、イメージングシステムを用い、マルチウェルプレート上にて発光を検出し、LLNAで得られた感作性の評価と比較する。なお陽性感作性物質として、極強度感作性物質の2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB),中等度感作性物質の2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT),軽度感作性物質のα-ヘキシルシンナミックアルデヒド(HCA)をはじめ、これまでにLLNAで評価されてきた化学物質を用いてバリデーションを行い、結果の整合性を評価する。 さらに2021年度には、2020年度の結果を踏まえ、最終目標である「マウス生体でのin vivoイメージングによる皮膚感作性物質評価」を検証し、2Rを満たす新たな試験法のプロトコールの確立を試みる。
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Causes of Carryover |
当初は、本検討に用いる一般試薬や器具類を購入する予定で予算を計上したが、2019年度は、一部本研究室に既存の試薬や器具を用いて実験を行うことができたため、予算額が予定よりもわずかに少額となった。この残額は、2020年度の一般試薬や消耗品に用いる予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] In vivo profiling of 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin-induced estrogenic/ anti-estrogenic effects in female estrogen-responsive reporter transgenic mice2020
Author(s)
Ichiro Yoshida, Keishi Ishida, Hiroshi Yoshikawa, Sho Kitamura, Youhei Hiromori, Yasushi Nishioka, Akiko Ido, Tomoki Kimura, Jun-ichi Nishikawa, Jianying Hu, Hisamitsu Nagase, Tsuyoshi Nakanishi
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Journal Title
Journal of Hazardous Materials
Volume: 385
Pages: 121526
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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