2019 Fiscal Year Research-status Report
Methylmercury-induced specific cytotoxicity in sensory nerves.
Project/Area Number |
19K19417
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉田 映子 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (50735488)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メチル水銀 / 末梢神経障害 / 感覚神経 / 前角神経 / 後根神経節(DRG) |
Outline of Annual Research Achievements |
水俣病の初期症状として出現する四肢末端の感覚障害は,中枢性(大脳皮質中心後回)病変によるものと,末梢性(末梢感覚神経)病変によるものとが考えられている。水俣病患者の病理組織学的検討における重要な点として,運動神経は傷害がなく,感覚神経のみ顕著に傷害されること,その傷害は軸索変性が先行しており髄鞘(シュワン細胞)には変化が見られないことが報告されている。このように,病理組織学的な感覚神経病変は示されているが,末梢神経を構成する神経のなかでも感覚神経のみが傷害される分子的基盤に関する報告例は少なく,未解明な点が多い。本研究の目的は,メチル水銀による感覚障害の発症機序について,末梢神経を構成する感覚神経(脊髄後根神経節),運動神経(脊髄前角神経細胞)およびシュワン細胞を用いて比較し,メチル水銀中毒で感覚神経優位な傷害が起こる因子を明らかにし,メチル水銀による感覚神経傷害の毒性発現メカニズムを細胞から個体レベルで明らかにすることである。 2019年度の研究成果より,脊髄後根神経節(DRG)と脊髄前角神経細胞(AHC)およびシュワン細胞の初代培養による比較において,メチル水銀によるDRG特異的な傷害がメチル水銀の細胞内蓄積量に依存すること,そしてこれはDRGにおけるメチル水銀の細胞内輸送体LAT-1の発現が恒常的に高いことに加え,メチル水銀の細胞外排泄に関わる輸送体MRP-2の発現が低いことに起因することが示され,DRG神経細胞がメチル水銀を蓄積しやすい特性を有することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,まず第一に末梢神経を構成する神経細胞単位におけるメチル水銀感受性の評価を実施し,初代細胞培養系においてもメチル水銀によるDRGが顕著に傷害を受けることが示された。第二に,メチル水銀による感覚神経優位な傷害に関する分子機構について,DRGにおけるメチル水銀高感受性を決定づける因子として,メチル水銀の取り込み・排出に関わるトランスポーター(LAT-1, MRP)の発現量が関与することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の予備検討として,水俣病初期症状モデルラットの脊髄後根を用いたマイクロアレイ解析により,TNF-aやIL-1βなどの炎症性サイトカインが増加すること,また細胞死に関わるTNFシグナルやToll-like Receptorシグナルの関連因子が変動することを見出している。2020年度は,これらの炎症性サイトカイン(特にTNF-aを中心に)による感覚神経細胞優位な細胞毒性,およびメチル水銀による感覚神経病態変化における炎症性サイトカインの関与について,細胞および個体レベルで検討する予定である。
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Causes of Carryover |
他機関からの助成金の交付もあり,当初購入を予定していた10万円以下の実験器具や初代培養関連試薬および消耗品費への使用が抑えられた。2020年度以降はさらに細胞および動物実験が増加すると予想され,動物購入費や初代培養に関わる消耗品類への支出が必要となるため,本年度分を次年度以降へ繰り越し使用することとした。
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