2019 Fiscal Year Research-status Report
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の非意図的曝露によるNAFLD増悪化に関する研究
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19K19420
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
杠 智博 摂南大学, 薬学部, 助教 (10783011)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NAFLD / ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 / 核内受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 (BUVSs) は、様々な工業用原料及び化粧品に汎用されている。しかし、一部の物質は化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律により規制されているにもかかわらず、環境試料及び人体試料中に検出されることから、BUVSsの非意図的曝露が引き起こす健康毒性影響が懸念されている。一方、非アルコール性脂肪肝疾患 (NAFLD) は、日本人の約30%が罹患しているとされており、重篤化すると肝硬変や肝癌に進行しうる生活習慣病である。その病因としては、肥満やインスリン抵抗性等のエネルギー代謝異常に加え、炎症や酸化ストレス等の様々なリスク因子が複合的に作用することが知られている。本研究課題では、BUVSsの非意図的曝露とNAFLDの病態機序との因果関係の解明を目的とする。令和元年度は、11種類のBUVSsを対象に、糖・脂質代謝を制御する核内受容体に対する活性化作用を評価し、いくつかのBUVSsがPPARα活性化傾向を示すことを明らかにした。また、ヒト肝癌細胞株を用いた検討により、それらBUVSsがPPARαの標的遺伝子を含む糖・脂質代謝関連遺伝子の発現を攪乱することを見出した。この結果は、意図せず曝露されたBUVSsがPPARα等の核内受容体を介して生体内の糖・脂質代謝恒常性を攪乱し、NAFLDの発症・増悪に関与する可能性を示唆するものである。令和2年度以降もBUVSsとNAFLDの関連性について引き続き検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、BUVSsを対象に、糖・脂質代謝関連核内受容体の活性化作用の評価、及びNAFLDリスク因子への影響評価を目的とし、検討を行った。その結果、規制、未規制のBUVSsがPPARを介してNAFLDリスク因子を攪乱することを見出した。したがって、当初計画していた通り、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
NAFLDの発症、増悪化に対する生活関連物質の関与に関する報告は少ない。そこで本研究課題の今後としては、in vitro NAFLDモデルを用いて、BUVSsの毒性影響を評価する。ヒト肝癌細胞株HepG2とヒト肝星細胞株TWNT-1の共培養系を脂肪酸で刺激することで作製したin vitro NAFLDモデルに対し、BUVSsによる影響を、脂肪蓄積量や抗酸化活性、関連遺伝子発現量等を指標として解析する。
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Research Products
(3 results)