2019 Fiscal Year Research-status Report
アスベスト関連疾患の早期診断・指標の開発:エクソソーム内包microRNAの解析
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19K19423
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
友永 泰介 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (20721707)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アスベスト / microRNA / エクソソーム / Exo-miRNA / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アスベストをラットの気管内に注入して気管支肺胞洗浄液や血液からエクソソーム内包microRNA(Exo-miRNA)を解析するin vivo解析と培養細胞にばく露して培養上清からExo-miRNAを解析するin vitro解析を総合的に評価し、アスベストばく露の有無を評価・予測するExo-miRNAの同定することを目的とする。 今年度は、in vivo解析としてアスベストの1種であるクリソタイルの3用量(0.04、0.2、1.0 mg/rat)と溶媒の蒸留水をラットの気管内に注入し、3日、3ヶ月後に解剖と採血を実施した。肺の病理学的解析では、用量依存性に、注入後3日で肺炎症が増強し、注入後3ヶ月で線維化が進行することを観察した。また、ばく露3日後の気管支肺胞洗浄液中の細胞内に存在するアスベスト本数は、ばく露量および肺傷害の程度と正に相関していた。次に気管支肺胞洗浄液および血清中から精密濾過法でエクソソームを単離し、Exo-miRNAの網羅的な発現解析を実施し、アスベストばく露によって発現が増減するExo-miRNAを見出した。 in vitro解析ではin vivo解析で使用したクリソタイルをヒト正常胸膜中皮細胞に2用量投与した(5.8、58 μg/ml)。投与後72時間の培養上清を回収し、in vivo解析と同様に精密濾過法でエクソソームを単離し、Exo-miRNAの網羅的な発現解析を実施し、アスベストばく露によって発現が増減するExo-miRNAを見出した。 来年度は強い肺炎症を誘導する工業用化学物質1種をラットの気管内に注入するin vivo解析と培養細胞にばく露するin vitro解析を実施する。in vitro解析においては、使用する培養細胞は正常胸膜中皮細胞株以外に肺を構成する正常細胞株も検討し、アスベストのin vitro解析も引き続き行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ラットの気管にアスベスト(クリソタイル)を注入し、肺に炎症および線維化を誘導することができた。また、精密濾過法を用いて気管支肺胞洗浄液、血清、細胞培養上清からエクソソームを単離し、Exo-miRNAのマイクロアレイ解析は終了した。各々試料で発現が増減したExo-miRNAを見出していている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、強い肺炎症を誘導する工業用化学物質1種を用いて、今年度と同様にin vivo解析とin vitro解析を実施する。今年度はアスベストばく露による影響を検討するために正常胸膜中皮細胞株を使用したが、来年度はヒト、ラットあるいはマウス由来の正常肺胞上皮細胞のうち利用可能な細胞を用いて工業用化学物質の影響を検討する。また、これらの細胞に対するアスベストばく露の影響も併せて検討し、in vitro解析の最適化を目指す。Exo-miRNAの網羅的解析は今年度と同様に行い、アスベストで増減するExo-miRNAとの相違を明らかにすることでアスベスト特異的Exo-miRNAの同定を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は研究に大きな問題が発生せず順調に進んだため、消耗品等に少額の余剰金が発生した。試薬や消耗品が高額なため余剰金はこれらの購入に使用する。
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