2019 Fiscal Year Research-status Report
ALDH2遺伝子多型の飲酒関連がん発がんリスク:媒介分析による評価
Project/Area Number |
19K19425
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
小柳 友理子 愛知県がんセンター(研究所), がん情報・対策研究分野, 主任研究員 (60825727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 飲酒 / ALDH2 / 消化管がん / 媒介分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルコール代謝産物であるアセトアルデヒドの代謝に関わるALDH2(Aldehyde dehydrogenase 2)遺伝子のrs671多型(Glu504Lys)のLysアレル には、アセトアルデヒド暴露量増加によって発がんリスクを上昇させる効果と飲酒行動を抑制し発がんリスクを低下させる効果が知られているが、従来の疫学的検討はこれら2つの相反する効果を区別せずに評価してきた。本研究では、これらを区別して評価できる「媒介分析」という手法を用いた5つの消化管がんの症例対照研究([症例/対照]: 頭頸部 [748/1,113]、食道 [617/882]、胃 [1,491/2,187]、小腸 [29/111]、大腸 [1,214/1,772] )により、アルコール誘発性消化管がんにおけるALDH2が関連するアセトアルデヒド代謝の発がん効果(直接効果)とrs671多型のLysアレルの飲酒行動を介した発がんへの保護的効果(間接効果)を区別して定量化した。結果として、飲酒は小腸を除く全ての消化管がんリスク増加と関連していたが、媒介分析により、rs671多型のLysアレルの有意な直接効果は上部消化管においてのみ認められ、効果の大きさは臓器毎に異なることが示された(直接効果オッズ比 [95%信頼区間]:頭頸部 1.83 [1.43-2.36]、食道 21.15 [9.11-49.12]、胃 1.65 [1.38-1.96])。一方で、有意な間接効果は小腸を除く全てのがん種で認められた。本研究により、飲酒は消化管がんのリスク因子であるが、臓器毎にアセトアルデヒドの発がん効果の大きさは異なり、アルコール誘発性消化管がんの発がんメカニズムには臓器間差があることが示唆された。更に、rs671多型のLysアレルが、飲酒行動の抑制を介し、ほとんどの消化管がんの発がんに保護的効果をもつことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
頭頸部、食道、胃、小腸及び大腸がんの症例対照研究を実施し、媒介分析を用いて、臓器横断的に消化管がんにおけるALDH2が関連するアセトアルデヒド代謝の発がん効果及びrs671多型のLysアレルの飲酒行動を介した発がんへの予防効果の2つの相反する効果を区別して定量化した。当解析結果は2020年4月に米国癌学会が発行する Cancer Research 誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
他の飲酒関連がんにおいて同様の解析を行い、ALDH2が関連するアセトアルデヒド代謝の発がん効果及びrs671多型のLysアレルの飲酒行動を介した発がんへの予防効果を定量化する。
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Causes of Carryover |
2019年度で対象としなかった飲酒関連がんに関して、次年度に同様の検討を行うため次年度使用額が生じた。Genotypingや本研究課題の成果発表などに予算を使用する計画である。
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[Journal Article] Across-site differences in the mechanism of alcohol-induced digestive tract carcinogenesis: an evaluation by mediation analysis2020
Author(s)
Yuriko N. Koyanagi, Etsuji Suzuki, Issei Imoto, Yumiko Kasugai, Isao Oze, Tomotaka Ugai, Madoka Iwase, Yoshiaki Usui, Yukino Kawakatsu, Michi Sawabe, Yutaka Hirayama, Tsutomu Tanaka, Tetsuya Abe, Seiji Ito, Koji Komori, Nobuhiro Hanai, Masahiro Tajika, Yasuhiro Shimizu, Yasumasa Niwa, Hidemi Ito, Keitaro Matsuo
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Journal Title
Cancer Research
Volume: 80
Pages: 1601-1610
DOI
Peer Reviewed
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