2021 Fiscal Year Research-status Report
ソルバトクロミズムを利用した食品添加物の新規迅速検出法の開発
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19K19426
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
松井 啓史 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 研究員 (40827284)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 着色料 / トリアリルメタン / MCR / ソルバトクロミズム / 微分スペクトル / 青色1号 |
Outline of Annual Research Achievements |
着色料は様々な食品に広く用いられる食品添加物の一つである。使用可能な物質や使用時の表示義務が法律によって定められており、その適正な使用の検証のために分析手法の開発は重要である。本研究では、可視吸収スペクトルにケモメトリックスの手法の一つであるMultivariate Curve Resolution(MCR)法を適用することで、液状食品試料中の5種のトリアリルメタン系の着色料に対する迅速同時分析法を開発した。分析対象とした5種の着色料は互いに類似した化学構造・吸収スペクトルを有しているため、従来の方法では事前に煩雑な前処理が必要となるクロマトグラフィーを利用しなければ同時分析は困難であったが、本研究ではソルバトクロミズムと二次微分スペクトルを利用することで、分析対象物質への特異性を高め同時分析を可能とした。検討の結果、開発した手法は妨害物質の存在下でも問題なく分析が可能であることが示され、既存の液体クロマトグラフィーを用いた分析手法とよく一致した分析結果を与えた。また、これまでMCR法を用いた妨害成分の微分スペクトルの推定は行われてこなかったが、本研究ではガウス関数の二次微分を基底関数に採用し、その展開係数を解析することで妨害物質の二次微分スペクトルを推定することに成功した。開発した手法は現在広く用いられるクロマトグラフィーを利用する分析手法と比較して試料の前処理が劇的に簡便であるため、本研究で得られた結果は分析作業の迅速化・低コスト化に寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では可視吸収スペクトルにMCR法を適用することによって、使用頻度の高い食品添加物の一つであるトリアリルメタン系の着色料を対象とする分析手法を開発した。開発した手法の検討においては、単一の溶媒で得られた測定データでは有効な分析結果を得ることが困難であった一方で、2種類の溶媒で得られた測定データを統合することによって解析が可能となることが明らかとなった。この結果は本研究課題の主目標であったソルバトクロミズムの利用による特異性の向上を示すものであり、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に開発した分析手法の他の食品添加物への適用可能性を検討する。具体的にはトリアリルメタン系の着色料と併用されることの多い黄色・赤色系の着色料が分析対象の候補となる。これらの候補物質は吸収波長領域がトリアリルメタン系の着色料と大きく異なるため、同時分析が可能と予想される。分析可能な対象を増加させることでより実用的な分析手法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
感染症感染拡大の影響でオフラインで予定されていた学会等がオンラインに切り替わったため。 本年度に得られた成果を発表するにあたって必要となる追加検討や英文校正費用に使用する計画である。
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