2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト治療薬耐性サルモネラが鶏肉に残存するのはなぜか?原因解明と汚染低減の為の研究
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19K19428
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Research Institution | Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
重村 洋明 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (50761540)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サルモネラ / ESC / 保有率 / 薬剤耐性 / 鶏肉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「養鶏産業でのセフチオフル使用中止後も広域スペクトラムセファロスポリン(ESC)耐性サルモネラが鶏肉で検出される理由の解明」、「ESC耐性サルモネラが分離される鶏肉の生産地域の推定法の検討」、「ESC耐性サルモネラの鶏肉を介したヒトへの感染状況の解明」を行うことを目的としている。 令和2年度は、鶏肉に由来するESC耐性サルモネラの全ゲノム解析を実施した。セフチオフル使用中止後も鶏肉でESC耐性サルモネラが検出される理由を検討するため、セフチオフル使用中止前後に分離された株について、生存に有利に働く可能性のある遺伝子の検索を行った。これにより、いくつかの候補遺伝子の存在が浮かび上がっており、これら遺伝子の関与の可能性について検討を進めている。 また、鶏肉の生産地域の推定法の検討のため、鶏肉検体の安定同位体比分析及びデータ解析を実施した。これにより、安定同位体比が検体ごとに異なることが示された。しかし、生産地域による傾向が認められるかについては、さらに多くの検体データを用いて解析を実施する必要があると考えられた。 ESC耐性サルモネラの鶏肉を介したヒトへの感染状況の解明のため、令和元年度調査分に加え、新たにヒト由来サルモネラ菌株を収集した。これらの中から複数のESC耐性株が検出された。検出されたESC耐性株の血清型は、鶏肉からもESC耐性株として検出されることがある血清型であり、鶏肉からのヒトへの伝播の可能性が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、安定同位体比分析用に検体収集を行い、他施設での安定同位体比分析の実施を予定していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、外部への移動が難しくなったことや、所属機関における新型コロナウイルスの検査・解析業務の対応が必要となったことから、当初予定していた実施計画の遂行が困難となった。令和2年度は、全ゲノム解析によるサルモネラ菌株の遺伝子解析、新たに収集したヒト由来サルモネラ菌株の血清型別とESC耐性株の検索を主軸として研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
分離されたESC耐性サルモネラの全ゲノム解析を継続実施する。ESC耐性サルモネラがβ-ラクタマーゼ遺伝子以外に生存に有利になる遺伝子が存在しないか検索を行う。また、昨年度予定していた検体収集を行い、安定同位体比分析によるデータを取得を行う。これまでの結果と合わせて、ESC耐性サルモネラに汚染されている鶏肉の生産地域推定法としての実用性について検討を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス拡大による影響を受け、ゲノム解析用のパソコン(ワークステーション)の納品が遅れ令和3年度の納品となったこと、検体収集の予定延期とそれに伴う安定同位体比分析の延期により、使用予定研究費を翌年度に繰り越すこととした。 (使用計画)パソコン(ワークステーション)の購入、延期した検体収集のための旅費、安定同位体比分析費用、ゲノム解析費用等に使用する予定である。
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