2022 Fiscal Year Research-status Report
自律神経機能からみた代謝疾患における左室拡張機能障害の病態に関する研究
Project/Area Number |
19K19446
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
小阪 佳恵 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90825663)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心不全 / 左室拡張機能障害 / 自律神経機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、左室収縮機能が保持されている拡張性心不全(Heart Failure with preserved Ejection Fraction:HFpEF)が増加している。糖尿病、肥満、脂質異常等の代謝疾患は自律神経機能障害と関連すること、またHFpEFの危険因子であることが報告されているが、心不全に至っていない代謝異常患者における左室拡張機能の実態は明らかでなく、さらにその病態における自律神経機能の意義を検討した論文はない。本研究は、心不全を発症していない代謝異常患者における自律神経機能と左室拡張機能の関連を耐糖能異常、インスリン抵抗性、肥満の関連から横断的に検討することを目的とした。Hyogo Sleep Cardio-Autonomic Atherosclerosis (HSCAA) Studyに登録された605名の心不全、心疾患、不整脈などを有さない代謝異常患者を対象とした。結果は耐糖能異常・糖尿病患者では左室拡張機能の有意な低下を認めた。内臓脂肪面積 100cm2以上の内臓肥満患者も、有意な左室拡張機能低下を認めた。一方、自律神経機能(SDNN, HF)は左室拡張能指標(E/A)と有意な正の相関関係を示し、この関連はHFpEFとの関連が知られている、年齢、性別、喫煙、高血圧、脂質異常症、腎機能に加えて、HbA1c、BMI、内臓脂肪面積、HOMA-IRなどに独立して有意に認められた。このことから代謝異常患者において、自律神経機能異常、特に副交感神経機能低下は、他のリスク因子と独立して、心不全発症前から左室拡張機能に影響する可能性が示唆された。また、HSCAA Study に登録された対象者のうち、心不全未発症の患者452名の登録時点における「睡眠の問題」が心拡張機能へ与える影響について前向きに検討した。その結果、客観的に評価された睡眠時の「無呼吸」と睡眠の「質」の低下がそれぞれ独立して将来の心拡張機能低下と有意に関連することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究者は2021年度より育児休業から復帰し研究を再開した。休業中の患者データの収集は行っており、上記解析結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、内臓肥満、境界型糖尿病などの早期の代謝異常で、心臓自律神経機能、左室拡張能のいずれも低下すること、これは糖尿病でさらに悪化することが認められた。自律神経機能、また副交感神経機能活性は、左室拡張能の重要な規定因子と考えられ、この関連は他のリスク因子と独立して認められた。本研究により心不全発症前の早期の代謝異常においてすでに左室拡張機能が低下している可能性、およびその病態に自律神経機能がかかわる可能性が示された。さらに、現在追跡中のHSCAAコホート研究により、自律神経機能が将来のHFpEF発症の予測マーカーとなる可能性を明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は物品購入の必要が少なかったため。次年度は研究に必要な物品を購入する予定である。
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