2020 Fiscal Year Research-status Report
がん診療連携拠点病院制度が医療の均てん化に与えた影響を評価する実証研究
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19K19452
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
大川 純代 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 疫学統計部研究員 (50747673)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん登録 / がん診療連携拠点病院 / 診療実績 / 観血的治療 / ホスピタルボリューム / 生存率 / 医療の均てん化 / 集約化 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん診療連携拠点病院(拠点病院)制度は、拠点病院を中心に患者を集約化し、がん医療の均てん化を目指している。昨年度の研究で、観血的治療(外科的・鏡視下・内視鏡的治療)件数の多い病院ほど患者の5年生存率が高いことを示した。これを踏まえ、今年度は国指定拠点病院、府指定拠点病院、それ以外の病院(非拠点病院)で治療を受けた患者のカバー率と生存率をもとに、患者の集約化と治療成績を比較評価した。 大阪府がん登録情報を用いて、2010年から2012年にがんの診断を受け、大阪府内の医療機関で観血的治療を受けた15歳以上の患者を対象とした。病院を国拠点病院、府拠点病院、非拠点病院に分類し、コックス比例ハザードモデルを用いて、共変量を調整したハザード比と3年生存率を推定した。 その結果、拠点病院の患者カバー率は86.4%だった。がんの部位別に拠点病院のカバー率をみると、胃84.5%、大腸79.9%、肺95.9%、乳房86.8%、子宮90.7%、前立腺90.8%、その他88.9%だった。調整済み3年生存率は、非拠点病院と比べると、国拠点病院は7.8%ポイント、府拠点病院は5.4%ポイント高かった。がんの部位別にみると、国拠点病院は1.4-11.7%ポイント、府拠点病院は1.0-8.8%ポイント高かった。 今年度の研究結果から、観血的治療を行った患者の86%が拠点病院で治療を受けており、3年生存率は国拠点、府拠点、非拠点病院の順に高いことがわかった。しかし、カバー率、生存率の差の大きさはがんの部位によって様々であった。このことから、がんの部位ごとの特徴を考慮した患者の集約化を進めることで、がん患者の生存率が改善する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究結果を発展させ、拠点病院の患者カバー率と患者アウトカムの現状を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1:国指定拠点病院、大阪府指定拠点病院の指定要件として、年間400件、200件の手術の実績が求められている。先行研究では、手術件数と患者生存率の関連性は、一定の件数までは手術件数が増加するほど生存率も向上するが、一定の件数をこえると生存率は変化しなくなるという傾向があるといわれている。本研究では、手術件数と生存率との関連性が変化する手術件数を特定し、現行の指定要件と比較する。 研究2:国内外では、医療の集約化や技術の確保・維持のための政策として、病気や手術の種類別に最低必要な手術件数を設定している。日本では、外科系学会などが研修施設や認定施設の資格条件として手術件数の基準を設定している。本研究では、手術件数と生存率との関連性が変化する手術件数を特定し、現行の資格条件と比較する。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により国際学会への出張をとりやめたため。次年度は、発表論文が2本以上になる見込みのため、英文校正費や掲載料が必要となる。研究成果を複数の国際学会で発表することを検討しており、参加費が必要となる。国際学会の現地開催が可能となれば、ぜひ現地で参加したく、その場合は渡航費が必要となる。また職場が変わるため、研究環境を整えるために機材や物品を購入する必要がある。
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