2020 Fiscal Year Research-status Report
健康行動を規定する社会的ネットワークの解明:構造と媒体の視点からの検討
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19K19455
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 大資 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10724726)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会的ネットワーク / 社会ネットワーク分析 / 健康行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①既存の社会調査データを用いた、親密圏ネットワーク内の他者の喫煙行動および彼らのネットワーク構造的特徴と、回答者の喫煙行動の関連についての実証的検討、②ある自治体の全町内会間ネットワークデータを用いた、町内会のネットワーク構造的特徴と活動水準の関連、およびネットワークを通じた活動の社会的伝播についての実証的検討、③一般住民を対象とした社会調査による、具体的な地域組織への参加データに基づいた住民間ネットワークの把握(2モードネットワーク)、の3点に取り組んだ。 ①については、既存の社会調査で得られた1,998人の回答者における4人の親密他者(オルター)の喫煙行動、および彼らの間のつながりの有無のデータを用い、ネットワーク中心性(固有ベクトル中心性)が高いオルターの喫煙行動が、とくに教育歴の短い回答者の喫煙行動と正の関連を示すことを見いだした。この結果は、喫煙率の教育歴間格差が、親密な他者からの社会的影響の受けやすさの違いによって一部説明されうることを示唆している。この研究結果については、英文雑誌Social Science & Medicineにて刊行された。②については、ある自治体の全190町内会の会長を対象とした郵送調査により、協働関係の有無によって町内会間のつながりを測定し、ネットワークデータを作成した。このデータから、紐帯を有する町内会の間で活動水準が正の関連を示すこと、およびネットワーク中心性(媒介中心性)が高い町内会ほど活動が活発であることが見いだされた。この研究結果については国際学会(Tsukuba Global Science Week)にて発表を行っており、現在、英文雑誌への投稿準備中である。③については、昨年度実施した自治体とは異なる自治体でのデータ収集が完了し、記述的な分析が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、複数の社会ネットワーク分析を用いて、人々の健康行動に関連する社会ネットワーク特性についてのおおよその分析を終え、その結果の一つについては英文雑誌にて刊行され、別のものについても海外学術雑誌への投稿準備中であることから、研究はおおむね予定通りに進んだといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
町内会間ネットワークデータについては、別に実施された一般住民を対象とした社会調査と地点情報によって紐づけることができ、地域組織間のネットワーク構造が、そこに属している住民の健康アウトカムや健康行動にどのように関連するかを分析することが可能となっている。このマルチレベル構造のネットワークデータの分析を進める。また、具体的な地域組織への参加に基づいた住民間ネットワーク(2モードネットワーク)データの準備が完了したため、この分析を進める。これらの分析結果を本研究課題によってこれまでに得られた知見と統合し、人々の行動変容における個人レベルでのネットワーク介入と、組織レベルでのネットワーク介入の両方の観点から、行動変容を目的とした介入へのインプリケーションをまとめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により一部の調査実施・データ整備が遅れ、論文の刊行に至らなかった。そのため、次年度にその分析結果を英語論文としてまとめ、その英文校正費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)