2019 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中発症リスク要因としての長期避難生活が及ぼす影響に関する疫学研究
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19K19463
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中野 裕紀 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10736721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発症登録 / 循環器疾患 / 脳卒中 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島県内における脳卒中の発症状況について、平成25年1月1日から平成25年12月31日の発症例に26医療機関から総計9,447件の採録を行った。脳卒中診断基準によって、3,992件を除外したため、登録対象は総計5,455件(確実4,627件、可能性828件)であった。脳卒中の病型分類別では、脳梗塞が3,793件(69.5%)、脳内出血が1,277件(23.4%)、くも膜下出血が378件(6.9%)、その他の脳卒中が7件(0.1%)であった。再発者は1,424件で登録件数全体の約1/4(26.1%)を占めた。登録対象のうち、死亡は879件(16.1%)であった。震災の影響をみるために、避難区域等12市町村、中通り、会津、浜通りの4つの地域別に脳卒中の年齢調整発症率(10万人あたり)を算出した結果、発症率はそれぞれ、108.3、119.5、125.9、107.7であり、会津、中通り、避難区域等12市町村、浜通りの順で発症率が高かった。この傾向は、脳梗塞、脳内出血においては同様の傾向であったが、くも膜下出血については、中通り、浜通り、会津、避難区域等12市町村の順であったことが明らかとなった。これらのデータをもとにして引き続き、震災後の生活習慣、身体的因子、心理社会因子と発症の寒冷についての解析を進めていくことに加え、平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間を対象として、平成25年と同じ方法で同じ対象に対してフォローのための発症登録を引き続き行っている。平成25年の本調査では、避難区域等12市町村における発症率は他の地域と比較して明らかな差はみられなかった。これまでの県民健康調査では、震災後に避難された住民では、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常、メタボリックシンドロームを新たに発症した者の割合が有意に多かった。したがって、避難区域住民は今後脳卒中、心筋梗塞等の発症が増加する可能性が懸念されるが、今回の調査は震災2年後の調査であり、まだその影響が出ていないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年1月1日から平成30年12月31日を対象期間とした発症登録の遡り調査については、当初令和2年4月から開始する予定であったが、新型コロナウイルスによる感染症の影響で、採録対象の医療機関においての、打合せ等の調整の延期や、採録開始時期の延期の要望があり、各医療機関と個別で調整、検討を重ねてきた。一部医療機関においては採録を開始できたところもあり、鋭意採録を進めているところではあるが、採録ペースについては、当初予定よりも遅れていると言わざるを得ない。今後も引き続き協力医療機関との調整をすすめ、発症データの収集が迅速に進むようにつとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き平成30年1月1日から平成30年12月31日までを対象とした発症登録を継続していくが、若干の遅れがあることから、効率化と迅速化を図り、対処していく。関連して、これまでは医療機関における診療情報を紙媒体の登録票に転記し、データの電子化を行うという手順があったが、これを電子入力で行うことで、入力の効率化と、データの精度向上を両立するためにシステムを構築し、実運用を行いたい。既に入力システムは試用できることもまでは完成しており、動作チェックと改良を行っている段階にある。本システムが導入できれば、採録時間の短縮、採録データの精度向上にかなり寄与する。これに加え、平成25年の採録データの他の調査結果との紐づけ、より詳細に地域比較、病型や病態による比較を進めていく。
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Causes of Carryover |
平成30年1月1日から平成30年12月31日を対象期間とした採録について、福島県、福島県立医科大学、福島県下の医療機関での調整が遅れたことに加え、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、医療機関との調整、採録開始時期が当初予定よりも遅れたことから、前年度使用額が大幅に減じたことよるものである。しかしながら、これらの課題は解決されつつあること、採録及び登録システム、データベースの改良など、研究を進めるうえで必要な用途に使用したい。
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Research Products
(1 results)